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パッシブ設計

パッシブ設計とは

パッシブ設計とは、太陽の光や熱、風といった自然のエネルギーを活かして、住宅の快適性と省エネルギー性を高める考え方です。

ただし、「自然に寄り添う」ような曖昧なイメージで語られることが多く、本質が見失われがちです。設計とは本来、日射取得・日射遮蔽・間取り・空調計画までを理屈で構成することであり、すべてが地域や敷地に応じた答えを持つ必要があります。よく「パッシブデザイン」という言葉も使われますが、定義は人によってまちまちで、中には窓の配置だけで“通風”を狙ったり、南面に大きな開口を設けて“明るく暮らす”といった、印象的な要素が先行してしまうケースもあります。しかし、窓の位置やサイズを誤れば、逆に熱損失や結露を引き起こすこともあり、それは“パッシブ”ではありません。実際に、パッシブハウスのような認定住宅に価値を見出す声もありますが、それが必要な地域とそうでない地域があります。高断熱・高気密にすれば冬は有利に働きますが、夏には不利になることもあります。温暖な地域で無理にパッシブハウス基準を追い求めると、かえって住みにくくなるケースもあるのです。完璧を目指すよりも、「建てる地域にとって最適かどうか」という視点が大切です。つまり、パッシブ設計とは名前や基準を満たすことが目的ではなく、その敷地と暮らし方に合った性能と設計を、理屈をもって導くことが本質です。単に熱橋を減らせば良い、軒を出せば夏も涼しい、という話ではなく、すべての設計判断に“なぜそうするのか”という明確な理由があること。それが本当の意味でのパッシブ設計だと考えています。

風通しの良い家

「風通しの良い家」は一見魅力的に思えますが、現代の気候や住宅性能をふまえると、その言葉通りに受け取るのは危険です。実際、夏でも夜に気温が下がらない日が増え、風が通ってもその空気自体が暑く湿っていれば、室内はむしろ不快になります。加えて、外気を多く取り込むことで、湿気や花粉、ホコリも一緒に入ってきてしまうため、通風が快適性に直結するとは限りません。また、「風通しの良さ」を重視するあまり、気密性能が犠牲になってしまっている住宅も少なくありません。気密性が低いと、冷暖房効率が悪くなり、夏は暑くて蒸し蒸し、冬は寒くて乾燥しやすくなります。その結果、加湿器を使えば結露が起き、知らないうちに壁内でカビが発生するという悪循環に陥ることもあります。さらに注意が必要なのは、風は思った通りに吹いてくれるものではないということです。周辺の建物や地形によって風向きは簡単に変わってしまい、設計図通りに通風が機能するとは限りません。「風通しの良さ」をアピールするために、いたずらに開口部を増やしてしまえば、断熱性能や耐震性にも悪影響を及ぼします。本当に快適な通風計画を考えるのであれば、まずは気密性を確保した上で、間取りや建てられる場所に応じた開口の位置やサイズを理論的に設計する必要があります。