今回は質問コーナーです。
まずは1つ目です。
「私もいろいろ建築系YouTubeを見ますが、視聴者が配信者を勝手に神格化してしまい、他者の配信者を攻撃しているようなコメントを見るたびに、なんだかなぁと思います。いろいろ見て、自分の住んでいる土地にあったものを地元工務店に「これはどうですか?」と質問したらいいだけなのに。
読解力は大切ですね。これは読書でしか養えないと思っています。派手な見出し、要約され、編集された動画を見てしまうと、全てを知った感じになってしまう。そうなるのもしょうがないんですかね。」
神格化する話は、確か材木か何かの話だったと思います。あれも1つのコミュニティなんでしょうね。そこのコミュニティでやってくれればいいと思います。私も何度も言っていますが、一番いいのはYouTubeを見て気に入らなかったら、そこでストップすること、見ても余計なことを書かないことです。
そして、読解力は本当に今の時代は大切だと思います。読解力・理解力というか、もっとすごく単純に言うと、言ってること・書いてあることを正しく読むことです。書いてあることを正しく読むことすらできない人が、今は本当に多いみたいです。「1+1=2」と書いてあるのに、そこを読むまでに、勝手に自分の頭の中で3にしてしまう感じです。
他の人も「完璧を目指しても仕方ないので、見るべき動画を2つか3つ決めてそれを見て、その中で言ってることをきちんと理解する」と言っていました。かなり失礼なことを言いますが、いろんなものを見て取捨選択しようと思って手を広げても、それを取捨選択できないし、きちんと読まないのに範囲を広げても仕方ないです。それよりは、範囲を絞ってそこだけしっかり見るようにした方が安全というか、100%に近づく感じかと思います。
前に「工務店がなかなか見つからないので、おすすめの工務店を教えてください」みたいな質問をいただいたことがありました。私が思うのは「見つからないんじゃなくて、他に問題があるんじゃないの?」ということです。
それを「見つからない」と思っている理由は、1つは、そもそもその工務店さんの価値がよくわかっていないことだと思います。その工務店さんがマックスなのにそれ以上を求めているとか、相反することを言っていることもあるかもしれません。「どうしてもセルロースファイバーを使って調湿したいけど、この工務店さんは硬質ウレタンを使っていてセルロースファイバーで調湿してくれない」と言っても、また違う話になります。そこで「それがベストなのか」と考え方を変えればいいんだけど、どうしてもセルロースファイバーだけにこだわってしまうとか、他が見えなくなってしまう人もいる感じもします。見つからない側にも問題があるんじゃないかと思います。
あとは、お客さんの要望と金額が合っていないこともあると思います。それだけのものを作りたいのなら、それだけの額は掛かります。誰だって安い方がいいけど、安いということは、どこかで削減していることが絶対あります。
あとは、要望が多すぎることもあるかもしれません。140%のことを言っているとか、そんな感じも最近思うことがありました。昔は情報も少なくて、情報取捨の“取”ができなかったけど、今はこれだけ情報が溢れています。“取”はすごくできるけど、それが多様化しているから、そこなんじゃないかと思います。
いずれにしても、こういうコメントをされる方は頭がいいというか、客観的にものが見れる、読解力が鍛えられている方だと思います。こういう方は工務店さんも見つかると思うし、失敗もなかなかしにくいと感じます。
次のコメントです。
「無知な設計者問題もありますが、何もかも叶えたいという施主もまた多すぎです。吹き抜けがやりたい、耐震等級3は必須、G2は当然、でも1階LDKはできるだけ広くして、C値は0.5では納得いかない、など。」
施主さんの方も、情報をたくさん入れ過ぎて要望が多すぎる感じです。例えば「北側に大きい窓が欲しいけど、冬に寒いのは嫌」と言われたら、その窓をすごく強化するためにお金が掛かります。でもお金は出したくないと言われたら、困ってしまいます。“暖かい”というのも、人にとってどこまでの暖かさかもあるから難しいです。昭和の家に比べたら断熱等級4の家も暖かいでしょうけど、新築で断熱等級4は辛いです。下手したら、ちょっとしたアパートより寒いかもしれません。新築のプラシーボ効果で最初は暖かく感じたけど、実際住んでみたら違った、なんて話も多いです。
ちょっと悪口っぽくなるけど、当社のお客さんの友達が、某ハウスメーカーさんがすごく好きで、その会社さんで家を建てて、工事中はすごく嬉しそうに語ってたけど、実際に家ができあがって住んで、冬になったら寒くて窓が結露したそうです。営業マンさんに「結露しないと言ったよね?」と言うと、営業マンさんは「結露“しにくい”と言った」と言ったそうです。でもちょっと勉強すれば、あの会社の家で、あの窓を、あれだけつけたら、結露するだろうとわかります。その人の情報の“取”の問題だから、なかなか難しいです。
でも当社は、吹き抜けもやって、耐震等級3で、G2は当然で、C値は0.5以下です。ただ1階のLDKを広くしたいというのは難しいです。「こういう間取りなら広くできます」という感じですが、作らないといけない柱・壁が邪魔なんだと言われたら困ってしまいます。
それでも方法はあって、鉄筋コンクリートや鉄骨で建てるという方向に行きます。しかしそうすると、今度は気密性能や断熱性能が問題になります。そうなると、付加断熱じゃないと…となり、今度は予算が…という話になります。こういうのも、ちゃんと理論的に勉強したり、工務店さんに聞くのがいいと思います。
次は以下の動画に対してです。
▼①付加断熱工法は性能・外壁仕上・コストがポイント②外付加断熱を行うと外壁が崩れ落ちるBY元現場監督の営業マン③2.5寸柱+発泡ウレタン断熱は大丈夫か?
①付加断熱工法は性能・外壁仕上・コストがポイント②外付加断熱を行うと外壁が崩れ落ちるBY元現場監督の営業マン③2.5寸柱+発泡ウレタン断熱は大丈夫か?
「付加断熱を希望するのであれば、下調べでその工務店が対応しているかを確認した上で契約した方が良いんでしょうか?とはいえ施主のやりたい事を網羅している工務店もなかなか無いと思いますので、施主側からこういった工法や建材の採用相談ってやれるものなんでしょうか?ものにもよりますが…
・構造計算を品確法から許容応力度計算にしたい
・制振ダンパーを入れたい
・一体打ちの基礎にしたい
・防蟻は木材をホウ酸処理したい
・天井断熱を標準より厚くしたい
・フローリングを標準以外で施主指定したい
など。」
すべての会社ができるわけじゃないけど、できる会社はあると思います。ただ、ある会社はAとBができる、別の会社はCとDができるという時に、どちらを優先するかは取捨選択です。全てできる工務店さんは、地域によってはいるかもしれませんが、いない時はもう仕方ないです。それをどうしてもやりたいというのなら、それはもう見つからないかもしれません。でも、私が見る限りはそんなこともないと思います。
一体打ちの基礎は、確かにいいけど別の問題も出てきます。1回で済むから仕事が早いメリットはあるけど、まかり間違うと怖いので私はやりません。でも、一体打ちじゃないと基礎の強度が取れないことはないです。ただシロアリ問題が出ます。これに対してはホウ酸の防蟻シールをやるとか、止水板を入れるとか、そういう方法が必ずあります。しかし「どうしても防蟻シールと止水板は嫌だけど一体打ちがいい」と言われてしまうと相当難しいです。でもそこまで固執する問題なのかとも思います。問題が起こるわけではないのなら、それは許容していかないと、と思います。それで何が問題なのかという考え方にしないと、工務店さんも見つからないという話になるのかもしれません。
次のコメントです。以下の動画に対してです。
▼①付加断熱の時に透湿防水シートを貼る位置はどこ?②グラスウールには保温性がない?③解りやすい説明は、騙されやすい事もある④防湿気密シートを貼れば、スキンカットをしても良いか?
①付加断熱の時に透湿防水シートを貼る位置はどこ?②グラスウールには保温性がない?③解りやすい説明は、騙されやすい事もある④防湿気密シートを貼れば、スキンカットをしても良いか?
「実測した結果、断熱材だけで住心地は変わらない。というコメントを理論とデータと持って他に発信されている人ってあまりいらっしゃらないですね。確かに良いものなんだろうけど1種類の断熱材しか使わない発信者より色々な断熱材を使い続けた経験者からのコメントは説得力が違うと感じました。この動画で断熱材難民が減ると良いですね。」
断熱材で住み心地が変わるという経験は、私はありません。私も、グラスウールも、ロックウールも、発泡ウレタンも、セルロースファイバーも、発泡ウレタンも軟質・硬質ともに使ったことがあります。唯一使ったことがないのは羊毛です。なぜかと言うと、性能と価格のバランスがよくないからです。
セルロースファイバーは当社も屋根断熱に使っています。熱欠損が起こりにくい・熱容量が大きい点でいいものだけど、性能的にはいまいちです。グラスウールは比較的安価で、ガラスなので水を含みにくいし、性能も安定しています。ロックウールは石だから火に強いですが、マイナーな素材なので種類が少ないです。性能はグラスウールより悪いけど、シロアリに食われません。発泡ウレタンは、長期的な劣化に対しての不安はあります。しかし一発で気密が取れて、そこそこ断熱もよくなるし、工期も短いです。
ただ、どれをやっても住み心地がすごく変わることはないです。セルロースファイバーを使ったからって、家の中がすっきりするわけでもないです。何度も言ってますが、セルロースファイバーは調湿材ではないです。場合によっては、中でまかり間違って璧体内結露を起こした時に、それが保険になるぐらいの感じです。そういう意味ではいいと思うけど、断熱材としての性能はネオマフォームの半分なので、そこそこ厚くしないと性能が高まりません。
1種類の断熱材を使わない住宅会社さんについては、何か思い入れがあるならいいと思います。私の知り合いでも、埼玉にネオマをいっぱい使ってる人がいますが、パッシブ住宅しか作らない人です。あれぐらいになると、ネオマじゃないとそもそも無理です。普通のグラスウールでパッシブ住宅を作ったら、分厚くなりすぎて壁が納まりません。
1種類の断熱材しか使わない住宅会社さんでよくあるのが、その会社さんがその断熱材を、自社で製造していることです。投資して製造しているから、それをペイするためにその断熱材を使うしかない感じです。工務店さんの勝手な理屈ですが、こういう理屈もあります。
発泡ウレタンも、一発吹けばそこそこ断熱性も上がって気密も取れて、大工さんの手間も削減できます。大工さんにグラスウールを入れてもらうよりは、発泡ウレタンを吹いてもらう方がコストは削減できます。それが価格に反映されるなら、消費者の方にメリットがある、という考え方です。
もしかしたら私の経験が足りないのかもしれないけど、断熱材1つですごくすっきりするとか、すごく暖かいとか、すごく夏に涼しいとかは、私の経験ではありません。