今回のテーマは「UA値0.24〜0.25なのに室温が10℃以下の家がある」ということについてです。栃木県のラファエルさんという温熱環境に詳しい方が言っていたんですが、結論としては、間取りが悪くて燃費も悪いからということでした。
下田島モデルハウスは、去年の改修工事で、地域補正を使ってG3にしました。改修する前はG1.5だったので、そのままでも室温が上がっていくのかなとか、夏はそのままでも涼しくなるのかなと期待していましたが、そんなことは全くなかったです。改修して断熱性能を上げても、それだけで暖かくなることはないし、涼しくなることもないため、状況としては変わりません。冬に限っては、ちょっと寒くなったかなという感じがします。
当社で家づくりの相談をされるお客さんに「こういう理屈があるんですよ。」と言うと、「なるほどね。」と言われます。UA値は1つの指標であって、それだけで決まるわけではないということです。
もっと言うと、ゼロエネ住宅って何なんだろう?と思ったりします。あくまでもその家の中で、照明と空調と給湯にかかると予想される電気が、太陽光や省エネでプラマイ0になればゼロエネ住宅になるという理屈なんですが、だからといってその家の温度を何℃に保たなくちゃいけないとか、照明器具を何個つけなくちゃいけないというルールがあるわけではありません。
極端な話、30坪の家に照明が少しだけついていて、6畳エアコンがポンとついているという状態でも、申請が通ったら補助金を貰えてしまいます。ゼロエネの称号は貰えても、実際はゼロエネになっていないという家は多いというのが事実です。実際に、ゼロエネ住宅の半分ぐらいはゼロエネになっていないという報告もあります。補助金を貰えたとしても、後々電気代で取り返されることになるし、そもそも寒かったらどうにもなりません。
病気になってみないとわからないかもしれませんが、健康はお金には変えられません。当社が昨年の11月にオープンハウスをさせていただいたお家のお施主さんは、ご夫婦で医療関係の方でした。ご主人は手術の執刀医もされている方だったんですが、最近は40代の方でも、冬に血管系の病気になり、救急車で運ばれてくる方が多くなったと言っていました。昔は60〜70代の人がなる病気だったのに、若年化しているそうで、後遺症が残ってしまう方もいるし、リハビリに1年かかる方もいるとのことでした。
原因としては運動不足もあるし、コレステロールの問題などもあると思いますが、結局のところトリガーとなるのは、寒い家だそうです。寒い家は温度差があって、血圧がグーンと上がります。よく言われるヒートショックというものです。熱めのお湯で思いきり温まって蓄熱をして、その熱を持ったまま寒いところに行くとか、寒い部屋に行って布団を被るというのは、一見効率的かもしれませんが、心臓にはグッと負担がかかります。これは本当に危険ですよね。年配の方だったら余計に危険だろうし、若い方でも耐えられないことがあるみたいなので、気をつけた方がいいと思います。
そういうことをなくすためには、断熱性能を上げて、空調計画をする必要があります。どちらかだけをやっても、暖かくなるとか涼しくなるということはありません。また、UA値が低くても電気コストが上がってしまうことがあるので、建てる場所に合わせた間取りにする必要もあります。このバランスが大事だし、これをやっていかないと、快適かつランニングコストを下げることはほぼ不可能です。
以前、私の動画に対して、断熱性能を上げれば涼しくなるとか、暖かくなるということを言い切る方がいました。ただ、高性能系の設計をしている方も言っているし、私自身の経験からしても、UA値だけで語れることはないと思います。さらに、UA値という指標をどういう風に実現するかということを考えなければ、絵に描いた餅になってしまいます。それを否定する人がいたとしたら、一体どういう実測をしているのか聞いてみたいです。
当社で建てたとあるお客さんに「住まわれてから時間が経ってからで結構なので、固定資産税の金額と1年間の電気のランニングコストを教えててください。」とお願いしました。そのお客さんは去年の1月〜12月のkW数に加えて、電気代はこれだけ東京電力に支払ったということを教えてくれました。また売電金額は、ざっくりと月6000円ぐらいとのことでした。
そのお客さんのお家は6地域にあり、G2.5、C値は大体0.2〜0.3ぐらいです。ちなみにC値については、概ね1以下を目安にするのがいいと思います。C値が2を超えるような家に一種換気をつけてもほぼ無駄だからです。新住協の鎌田先生も、漏れてるから三種換気と同じだし、効率は三種と変わらないと言っていました。ハウスメーカーさんにも聞かせてあげたいです。
地球温暖化がどんどん進んでいって、夏の最高気温が50℃、冬の最低気温が10℃くらいになって、暑くてしょうがないから熱交換をした方がいいという時代が来たら話は別ですが、北海道でも三種を使ってる人は多いし、意外と温暖地の方が一種を使っている人が多かったりします。一種は一種でメリットもあるので、つけたければつければいいと思います。私はメンテコストのことを考えると一種じゃなくてもいいかなと思いますが、一種の方がいいかなと思うケースもあります。建てる場所によったりもするので、ケースバイケースです。
話を戻します。このお家は、6地域、G2.5、C値0.2、三種換気、延床面積は30坪、ご家族は4人、太陽光は5.4kWくらいです。さらにおひさまエコキュートをつけています。電気契約をくらし上手にすると、電気代が安くなるためです。あとは、太陽光でなるべく日中に自家消費をしていて、蓄電池はつけていません。空調は、屋根裏エアコン1台と床下エアコン1台です。
このお家は道路際に建っているので、場所的に日射取得がしづらい設計になっています。あんまり大きな窓をつけちゃうと防犯的に問題があるので、1階を腰窓にしているためです。また、道路際だとガンガン日射取得ができるわけじゃないので、冬場の電気代が多くかかっている感じがします。お客さん自身も、床下エアコンを長めにつけないと寒いみたいです。床下エアコンをつけないと、朝は18℃ぐらいまで下がるので、夜中の3時半〜7時半ぐらいは26℃でつけているとのことでした。
そういう前提条件があるので、一番寒い2月は411kWの使用がありました。日射取得ができているお家の場合、床下エアコンを使うのは大体正月明けからですが、このお家は12月中旬〜3月ぐらいまで使っていました。ざっくりとですが、このお家では、去年1年間の電気代は12万7591円だったそうです。また、太陽光発電が5.4kWなので、年間で7万円ぐらいは売れていることになります。差し引きすると、去年は真水でかかった電気代が6万円ぐらいということになります。10年以降は、卒FITというのがあります。今はたしか8.5円なので、使用量はそんなに変わらないと思いますが、卒FITすると3.3万円ぐらいになって、現状のままの料金だったら9万円ぐらいかなという感じです。
東京電力が、使用量は変わらないのに単価がどんどん上がっていくことになったら、蓄電池を検討するのも手です。蓄電池というのは他の動画でも言った通りちょっと難しいんですが、やってみるのもいいかと思います。蓄電池の中には、12000回も充放電しないようなものもあります。エコフローさんのものは4000回なんですが、計算上10年以上持つことになるため、安いといえば安いですよね。容量は7kWもなく3.6kWぐらいなんですが、上手く使えないかなと思い、YouTubeで勉強しています。
いずれにしても、ここのお宅は4人家族で、まだお子さんがそんなに大きくなってないから、電気代がこれぐらいなのかもしれません。老夫婦2人暮らしだったら、使う電気も少なくなります。私の両親は自宅のすぐ横に住んでいるんですが、本当に電気を使いません。逆に「俺は冬でも半袖でいたいんだ。」と、ガンガン回して電気代がかかっちゃうという人もいるかもしれないから、前提条件がないと難しいですが、あくまでも普通のご家庭で、変なことをせずにいればこんな感じなんだと、1つの例だと思っていただきたいです。
ちなみに、メルマガでも書きましたが、このお客さんとは別のお客さんにもデータいただいたところ、電気の使用料金はほぼ似通っていました。宣伝みたいになっちゃいますが、パッシブ設計をして、ちゃんとした間取りにすれば、大体同じくらいになるかと思います。機械でいろんなことをやる家づくりも悪いわけじゃないですが、設置コストがかかるし、壊れた時にはメンテコストがかかるし、意外に増エネになってしまうこともあります。ここは間違った解釈をしている人もいるかもしれないので、参考になれば幸いです。