今回は、私が配信させていただいたYouTubeに対するコメントを紹介します。
今は3月ですが、群馬県の最高気温は26℃ぐらいあって暑いです。下田島モデルハウスも、床下エアコンをかけていない状態で25.4℃あります。夏は冷房しない場合、1階の方が室温が低くなりがちです。冷房したら2階の方が涼しくなって、1階は温度が上がりますが、今みたいな中間期は2階の方が暑くなって、1階は日射取得の量が少ない分、室温が下がる傾向があります。
先日、今年初めてのオープンハウスを群馬県高崎市で行わせていただきました。無事にお引き渡しが終わったので、お施主さんも都市に近い方から移住してきて、住まわれています。本当に快適で、床下エアコンを使わなくても大丈夫みたいです。もう1軒、群馬県渋川市でもお家を作らせていただきました。高崎のお家と1週間違いぐらいでお引き渡しをさせていただいたんですが、「暖かい家を作ってくれてありがとう。」と言ってくれたので、よかったなと思いました。
渋川のお家のことはメルマガでもお伝えしました。なぜ当社に家づくりをお任せいただいたのかという件ですが、補足をすると、元々その方は当社じゃなくて、他の会社さんに相談に行かれたみたいです。松尾先生のセミナーに出られている高性能系の会社さんで、床下エアコンはやっているけど、屋根裏エアコンはやっていないというところだったそうです。
付加断熱をして、UA値をどんどん下げていくという家づくりをされているけど、日射取得のことはあまり考えない感じの会社さんだったので、渋川のお客さんは違和感を覚えたそうです。私のYouTubeを見られていたので、「何で日射取得をしないのかな?」と感じたみたいですが、相手もプロだから「こういうのもあるのかな。」と思ったそうです。でも、どうしても不安になってきて、当社に相談いただいたという流れです。
会社によって考え方があるので、それが良いか悪いかということは言えませんが、こういう風にした方がいいということは言えます。なので、「冬暖かくするためには、日射取得ができるのであれば、わざわざUA値を下げない方がいいんじゃないですか?」と、アドバイスさせていただきました。最終的にはご納得いただいて、当社が家づくりに携わらせていただきました。
何度も言っていますが、UA値というのはクセ者です。下げた方がいい場合もあるし、逆に下げない方がいい場合もあるからです。ZEH並みに、0.6〜0.8ぐらいにしろという意味じゃなくて、G2の方がいいという場合もあるという感じです。数値としては悪いけど、相対的にはそっちの方が暖かくて快適になることもあります。
日射取得を促進する家づくりというのは面倒臭いものです。毎回建てる場所に応じた設計をしなくちゃいけないので、全国で同じ家を建て続ける会社さんは、日射取得というところを意識していたら建てられません。なのでどうしても、UA値を下げて、床暖房で一気に暖めるという力技の世界になってしまいます。あれはあれで1つの方法ではあるし、どうやったって敷地によっては無理ということもあるわけなので、あくまでも快適な家を作るための1つの方法だと思います。
でも一方で、「何でこの敷地にそんなことをしちゃうのかな?」と思うこともあります。これについては、どっちが正解・不正解というわけじゃなくて、ただ単に方法論の話だと思います。大きな会社の方法論と、当社みたいな年間8棟ぐらいしか建てない会社の方法論は、全く違って当然ですよね。
先日このモデルハウスに来られた方から、「一条工務店さんと当社とでは何が違うんですか?」と聞かれました。会社の規模・売り上げもそうですが、家づくりにおいて何が違うのかといったら、今の話みたいなことなんじゃないかと思います。どこでどんな向きで建てようとも力技で何とかするのに対し、私は建てる場所に応じた設計をして、なるべく機械を使わずに快適になるような方法を提案しています。個別の仕上がりというのは違って当たり前ですが、もっと根本的な家づくりの考え方というのはそこにあるんじゃないのかなという感じがします。
お洒落・カッコいいというのも、作った人の責任かもしれませんが、そこよりも大事なのは、住み心地・安全性というところを、お客さんに約束した通りにきちんと仕上げているかということだと思います。デザインという部分は、平面図や立面図を見れば「何となくこういう家になるんだ。」と、消費者の方でもわかるじゃないですか。逆にわからない部分というのは、本当に暖かいのか、涼しいのか、安全なのかというところだと思います。そこの部分については、お客さんが口を出すわけにもいかないので、こちらがしっかりと責任を持ちますよというのがシンプルでわかりやすいんじゃないかなという風に感じます。
いよいよ本題に入ります。以下の動画に対して質問をいただきました。
◼︎①下田島モデルハウス見学にお越しになるお客様へのお願い②ペロブスカイトの使い道を考えてみた③屋根裏エアコン1台にこだわる必要はない④役所に建築確認申請書を出したら嫌な顔をされた⑤南西の南東、どちらの向きが良いのか?⑥空き家は活用できるか?
https://www.kosodate-sekkei.co.jp/blog/model_house_onegai/
「うちもリノベーションで部分断熱も考えましたが、寒い(暑い)部分ができるのが嫌だったので全部にしました。コスト面では新築のようになってしまうので、よほど客人も泊まる宿のようなスタイルでない限り経済合理性はないように思います。」
絵のように、あくまでも2人で暮らす場合、お子さんがお孫さんを連れてきた時にどこに泊まるかというと、何の断熱もされていないところになってしまいます。そういうシチュエーションを考えた上で経済合理性があるかどうかというと、なかなか難しいかなと思いますが、そこも考え方じゃないですかね。
別に質問者さんの意見が悪いわけではありません。ただ、今のお子さんは、遊びに来ても泊まっていくことは少ないんじゃないかと思います。息子さんは泊まっていくけど、お嫁さんはお子さんを連れて帰っちゃうかもしれません。遠くからわざわざ飛行機に乗って夏休みに来るような感じだったら泊まるでしょうから、そういう時はエアコンをつけて何とか凌いでもらうということもできなくはありません。そこは仕方ないという風に考えられるかどうかだと思います。
全部断熱するよりも部分断熱をした方が安いのは事実ですが、断熱をして快適になっても、見てくれが悪ければ満足度は低いですよね。新しい床を全面に張って、新しい壁にして、キッチンも新しくするという方が気分はいいはずなので、お金を出した甲斐があると思えるかどうかは難しいです。
今はランニングコストも建築コストも上がっているので、部分断熱を勧める住宅会社さんは当然いらっしゃいますが、目に見える満足感も一緒に高めていかないといけないと思います。当社にも部分断熱の相談は来たことがありますけど、実際にやったことはないです。田舎の古い家でやったらとんでもなくお金がかかっちゃうので、それだったら建て直して断熱もしっかりやった方がいいはずです。
もしくは、見た目にお金かける化粧直しリフォームをするという手もあります。それまでに住んでいた家よりも断熱性能は上がるけど、ZEH行くかどうかぐらいに抑えておいて、キッチンや床を綺麗にするという感じです。見てくれは良くなるので満足感は高くなりそうですが、今から作るのにそれはないかなと思ってしまうのが正直なところです。
4月1日以降に大規模リフォームをする場合、建築確認申請をしないと許可が下りなくなります。また、それに対してお金も時間もかかるので、以前よりも大規模リフォームのハードルが上がるかなと思います。ハードルが上がると言っても、大規模リフォーム系はかなり怪しいことをやっていました。
もう20〜30年前くらい前に、図面を貰って見積もりしてくれと話が回ってきたのが、住んでいるお家の2階をポーンと取って、そこに蓋をして中を改修するというものでした。最終的には予算が合わずに断りましたが、あの時の思い出が今でも残っているので、リフォームというのはなかなかすごいことをやるんだなという風に思ってしまいます。
私の仲間でそういう仕事をしている人は、柱1本1本を全部測って、基礎の中の鉄筋も全部見て、構造計算をちゃんとしてからやっています。ただ難しいのが、無垢材の杉というのは何となくこのくらいの強度があるという感じで、絶対にその強度があるかどうかは正直わからないということです。構造の原則であって、今だったら厳密にヤング係数か何かを測って出荷している材木屋さんもいますが、そういうところはすごく少ないと思います。私の知っている会社でも、すごくしっかりやっているところはありますが、その分高いです。
無垢の木の強度を測るには、大体このくらいだろうという前提で構造計算をするしかありません。ましてや古いものだと、その強度が本当にあるかどうかはわかりません。でも計算しないよりはした方がいいので、全部測っていって、構造計算をします。やっぱり昔の家だと、ここに柱がなくちゃいけないとか、梁がダメだとか、壁がなくちゃいけないということになってきます。基礎も同じで、そもそも中の鉄筋がダメということもあるので、新しい基礎を増し打ちして作って、構造というものを1回クリアにしてから、断熱材を入れてUA値を計算していきます。
部分リノベの話からフルリノベの話までしましたが、リノベーションというのは本気でやろうとすると難しいです。だからといって、建て替えできない地域も都市部にはあるわけなので、建て直せとも言いづらいのが事実です。いずれにしても、今年の4月から建築確認システムが変わることで、新築住宅やリフォームの手続きも変わってきます。とんでもなく厳しくなるわけじゃないので、まだまだ先は長いかなという気はします。
もしこの動画を見ている人で、「4月からすごい家になるんだ。」とか「すごい法律になるから、これから建てる家はみんな安全で高性能な家なんだ。」という風に勘違いしている人がいたら、そんなことはないと言いたいです。中にはそんなような説明をする人も現れると思うので、そういう人には騙されないようにしてください。