今回は、通気胴縁の付け方について解説します。
通気胴縁とは、外壁の裏側に通気を取るために設置する胴縁です。これに関しては間違っている会社が本当に多いと感じます。私も他の会社が建てている時に「どういう風に作ってるのかな」と、遠目で見たりしますが、本当にそう感じます。
また、例えば外壁メーカーさんが作っている、通気胴縁の施工マニュアルみたいなものがあります。ほとんどの会社さんはそれを元に胴縁をつけると思うけど、それで本当に通気するのかどうかは、疑問に思います。なぜかというと、外壁メーカーさんが出している通気胴縁の指針というのは「外壁の通気胴縁に対して」だからです。でも通気は、外壁の裏を通り続け、最終的には軒とかから出るので、屋根も関係するのです。
簡単に図で説明します。外壁メーカーが指示をする通気胴縁は、外壁の裏側につける通気胴縁のことです。通気が起こる理屈は、基本的には温度差換気で、下から入り、熱の上昇気流で上に上がってきます。そうして壁の上まで行ったものが、次は屋根を伝って高いところに行くのが理屈です。
でも、外壁メーカーさんが言ってるのは壁についてだけです。極端な話、仮に外壁をちゃんと施工したとしても、外壁の上で遮断してあったら詰まってしまいます。最終的には、天井断熱か屋根断熱かによって違いますが、軒からも入れて、屋根の棟から排出する感じが基本です。こういう流れをセットで考えれば、いくら外壁だけやっても空気が流れないというのは、なんとなくわかると思います。
なおかつ、これは屋根屋さんも意外に知らないことですが、屋根の形によっては換気の流れはうまくいきません。例えば切妻屋根で左右均等であれば、左右から来る気流のスピード・強さは同じです。しかし、例えば左側の方が長い屋根だとすると、左から入ってくる空気の方が当然強くなります。そうなると、右からの流れは止まってしまい、流れません。こういう場合どうするかというと、左右の気流がぶつからないように、棟で細工をします。
ただ当然、外壁メーカーさんは屋根メーカーさんじゃないし、棟のことを外壁メーカーさんの手順書で書いてあるわけがありません。ではどうするのかと言うと、これをトータルで考えるのが、住宅会社さんの仕事です。屋根屋さんをバカにするわけじゃないですが、屋根屋さんでこのような理屈がわかっている方は、私は今まで会ったことがありません。当社の屋根屋さんも、かなり社長さんも優秀な方で、いろんな研究に熱心な方だけど、さすがにここまで知りません。でも、職人さんはそもそもそういうものじゃないし、そこまで知らないのはおかしいとも言えません。
職人さんというのは、設計されたものをキチッとその通りに施工するのが領分です。通気するように考えるのは、住宅会社さんの仕事です。我々が理屈をわかって設計し、それを正しく施工するのが職人さんであり、設計書の通りに正しく施工されているかを確認するのが現場監督さんという、役割分担です。
そう考えると「職人さんがプロなんだからそういう風にやるべき」と思うのは、完全に間違いだという話になります。でも、なぜかわからないけど、住宅業界は「請負だから」という一言で全て済ませていることが本当に多いです。もっと言うと、設計・職人・現場監督の3者の関係もおかしいことが多いです。本来は、設計と職人さんとのやり取りがあり、それを現場監督が監督します。でも実際は、現場監督も設計の近くにいて、職人さんが下にいるような構図が多いと思います。
以前のYouTubeで「屋根屋さんが“棟換気は意味がない”と言っている動画がある」という話を解説しました。あれは、屋根屋さんは「通気しない」という“現象”を言っているだけです。その理由は、棟換気が悪いのではなく、通気する理屈が全然できてなかったから通気しなかったということです。その理屈を知らない屋根屋さんが、その現象を見て「棟換気しても通気しない」と言ったものです。
もしあの屋根屋さんがすごく通気に詳しかったら「これじゃ通気しない、この施工はダメだ」と言っていたと思います。「棟換気をつけても意味がない」ではなく「おそらくこうなっているから、通気しない棟換気になっている」という説明が本当は正しいけど、そこまで屋根屋さんでわかる人は、私はいないと思うし、私の経験ではそういう人に会ったことはありません。
もっと言えば、大工さんも同じです。大工さんは家づくりのプロと言うけど、どうやったら断熱性能高い家ができるかなどを知っている大工さんは、すごく少ないと思います。私の知り合いの大工さんで、自分で打ち合わせして、自分で設計して、自分で叩くみたいなすごい人もいらっしゃいますが、工事を請け負うような一般的な大工さんで、日射取得のいい間取りなどをわかっている大工さんはいないと思います。さっき言ったような、設計・職人・現場監督の3者の関係性がないと、なかなか家づくりは難しいです。
私が最近見た家で、通気しづらいだろうと思う家があったので、図で解説します。まず、一般的に一番通気しやすいのは、縦胴縁と言われています。壁の面に対して縦に胴縁を張れば、下から空気が入って、胴縁の間を通り、上に抜けます。また、外壁のサイディングは基本的に横張りが多いですが、外壁は縦でクロスする所で止めるから、縦胴縁にしないと横向きに張れないからです。サイディングは横張りにした方が、胴縁も縦になって、シンプルになって、通気がしやすくなります。逆にいうと、縦張りサイディングの場合は胴縁が逆になって複雑になるので、本当に気をつけないと通気しづらいです。
しかし私が見た会社さんは、壁の一番下のところに1周胴縁を回していたんです。下を全部ブロックして閉じているんだから、下から空気は入りません。でも不思議ですが、なんとなくこれで通気すると思っている人もいるんです。おそらくこれに対して水切りなどをつけるためにこうしているんだと思いますが、それならまた違う胴縁の納め方をしないといけません。
次に、横胴縁について解説します。これも、先程の一番下を塞いだ状態と同じで、1本目の胴縁で詰まってしまいます。これを詰まらなくするために、外壁メーカーさんの指針では「2mおきに3cmの穴を開ける」とされています。しかし、2mのスパンでそれだけ開けても、下から入った空気がスイスイ通ることはないと思います。
例えば、夏すごく暑いときはどんどん通気したいし、冬は余計に排気して璧体内結露を防ぐという考え方もあります。特に夏の通気は本当にものすごく重要なところです。でも、これでスイスイ通気するかといっても、私はなかなか難しいと思います。
ましてや実際は、サイディングなど外壁を窓の周りも止めないといけないので、窓の周りにも胴縁を回します。そうすると、仮に空気が通ったとしても、窓のない所を通ってくれればいいけど、窓の下で詰まったりすることも考えられます。また、まかり間違って横胴縁が窓側でジョイントしていて、家の角のところが開いていたとします。理想は、下から来る空気が角側の通気の穴を通り、窓側に溜まった空気も引っ張ってくれればいいですが、そんなにうまくはいかず、結局窓付近に溜まってくるリスクもあります。さっき言った、非対称の屋根で強さが違って空気が流れない話と同じです。
こういうのは、理屈・実験データもありますが、私は家づくりでは、想像がものすごく大事だと思います。現場で胴縁をつけてみながら「ここから空気流れて、これがこうなったら、こっちに行くよな」「ということは、こっち側も開けるのが正論だ」などと想像するんです。その胴縁を一部開けることで、すごく手間が掛かるわけでもないし、すごくお金が掛かるわけでもないし、すごく家が弱くなるわけでもないし、部品代がすごく高いわけでもありません。
家づくりは、理屈も大事なんだけど、イマジネーションも大事です。だから家づくりは、現場に足を運んで、職人さんに任せきりではなく、現場監督なりちゃんと正しい知識を持った人がやることが、私は絶対重要だと思っています。職人さんがそこまで全部わかっている人だったらいいかもしれないけど、事実としてなかなかそんな人はいません。
では、これをどうするのか。私の中では、それをなるべく簡単にシンプルにできる、職人さんにもいちいち言わなくてもうまくいくのは、ダブル胴縁だと思います。ダブル胴縁にして、どこからでも空気が通るようにすることです。
縦胴縁の場合は、よく川の字と言われますが、空気の流れは下から上の1方向です。でも、全部の胴縁の間に、うまく均等に風が入るかどうかはわかりません。建てる地域によっても違うし、風の向きも違います。本当に風はわからないので、左からは入っても、右には入らないということもあります。そうなると、左下から入った空気が右側に抜けるルート、つまり斜め横断もあった方がいいんです。その時に、右下の溜まった空気を引っ張っていくこともあります。これができるのが、ダブル胴縁です。
もしくは縦胴縁でも、縦胴縁の専用商品で、所々通気の溝が掘られていて、横にも通る感じのものもあります。ただ、特殊なものなので高かったりするし、すごくこういうことを気にする大工さんは自分で加工するような方もいますが、そういう人も少ないです。当社も最初は、こういうものを買ってやることも考えたけど、案外高いし、その溝も案外小さいので、ダブル胴縁で抜いた方が早いだろうということで、ダブル胴縁をやっています。こういうことは、なるべくシンプルな方がいいと思います。
私のメルマガに出てくる西の巨匠も、ダブル胴縁のさらに進化版みたいなことをやっていますが、その人は「風は気まぐれだし、どこからどういう風に吹くかもわからない。自分たちが思ったように綺麗にコントロールできないから、どこから来てもどこかに抜けるみたいに、風を自由にさせてあげるのがいろんな意味でいい」と言っています。本当にそうだと思います。
胴縁は見えないものだし、それを「こんな風が云々」などとホームページに書いてる人は、いるわけありません。そんなのを見たって、セールスの訴求にもなりませんから。でも、こういうことをきちっとできている会社さんは、他の部分、例えば断熱をちゃんと入れるというところなどにも繋がってくると思います。失礼な言い方ですが、こういうところも全然ダメ、基礎を見ても全然ダメという会社は、残念ながら壁の中も、どんな施工をしているのかと感じるところもあります。
こういう胴縁のこととか、基礎の鉄筋だとか、コンクリートの強度だとか、そういう部分はあまり力を入れないけど、一方でわかりやすい部分には力を入れる会社さんもあります。例えばキッチンがすごくいいとか、食器洗浄機は最初からついてるとか、ZEHとか、タイベックシルバー、遮熱シートなど、そういうわかりやすいところでアピールをして、見えないところはあまり語らないとか、そういうのは一切ホームページに載せないような会社さんは、個人的にはどうかなと思います。しかし、これはあくまで私の感覚なので、正しいかどうかはわかりません。
もしこの動画を見ている方がしっかりした家を作りたい場合は、そういう視点でも物事を見てもらえばいいんじゃないかなと思います。