明けましておめでとうございます。この動画が、2025年1発目の動画になります。今年もYouTubeだけでなくメルマガなどでも、私が実際に経験したことや、測定したこと、現場で施工したこと、私が信頼している方の経験談など、いろいろみなさんに役立つ情報をお伝えしたいと思います。今年も一生懸命頑張りますので、よろしくお願いいたします。
さて本題に入ります。今回は収納について解説します。ちなみに「なんでお正月に収納?」と言われても、特に理由はありません。
まずみなさんに質問です。「収納率」という言葉を知っていますか?これは、お家の延べ床面積に対して収納スペースの割合を示したもので、そういうものがあるらしいんです。しかしこれは、国が言っている数字でもないし、何かの正しい公式でもないんです。
例えば、「パッシブ設計をするためには◯◯で●●じゃないと、熱損失がこうなっちゃう」などの理屈があります。これは変えられない事実だと思います。ただ収納というのは難しくて、例えば、若い方であれば比較的ものが少ないとか、年配の方はどうしてもものが多いとか、お子さんの人数によっても収納が増えたり、お子さんがいなくてもすごく趣味が多い人では収納が増えたりします。結局は収納って、答えがあるわけではないんです。ただその中で、何かしらの目安があった方が安心する、という感じなのかなと思います。
これをネットで調べた上で思った私の想像では、この収納率が出てきた背景は、こういう指標を1つ作って世の中に出回れば、その数値をクリアした建売住宅・マンションなどを売りやすくなる感じなのかなと思いました。公式じゃないけどそういう指標があって、その指標があった方が安心感があるし、説明もしやすいというところから来たんじゃないのかなというのが私の想定です。
調べたところ、適正な収納率の目安は10〜15%なんだそうです。延べ床面積に対する割合なので、例えば30坪の家だとしたら、適正な収納は10〜15%なので、3〜4.5坪ということになります。畳数で言い換えると6〜9畳です。つまり、30坪の家では畳6〜9枚分の収納があれば問題ないという理論のようです。
でも6〜9畳となると幅があるし、人によって、15%が正しいのか10%が正しいのかもわかりません。ここで想定できるのは、小さな家の場合は15%で、大きな家の場合は10%なんじゃないかなということです。なぜかというと、例えば4人家族で、30坪の家を作っても40坪の家を作っても、ものの量はそんなに変わらないことってありますよね。ということは、40坪の大きな家を作った人は10%でよくて、30坪の家を作った人は15%ないといけません、という理屈なのかなと思います。
ここで、当社が作ったお家は実際どうなのかを調べてみました。去年2024年には、3月・5月・9月・11月末〜12月の4回オープンハウスを開催させていただいたのですが、この4軒のお家のデータを計算してみました。
3月のお家は、大きな平屋で41坪ありました。このうち収納面積は8.3坪だったので、収納率は20%です。また、このお家のご家族構成は3人です。
5月のお家は、30坪で、収納面積は3.75坪で、収納率は12.5%です。若いご夫婦でまだ2人ですが、奥様がご懐妊されて、来年の春にはお子さんが生まれるそうで、3人家族になります。最大では4人家族を想定されていました。
9月のお家は、37坪で収納面積が5坪、収納率が13.5%です。ご家族は現在3人ですが、将来は4人の予定と言っていました。
最後に11〜12月のお家は、ここはものすごく大きくて、何でも大きい家です。49坪で収納が12坪なので、収納率はなんと24.5%です。ご家族は、現在は2人だけど将来は4人の予定だそうです。
この4軒で見ると、一番広いお家が収納率も一番大きくて24.5%、次に広いお家も収納率大きめの20%、逆に一番小さいお家が12.5%となっていて、予想とは逆転現象が起こってしまっています。でも意外にこんなものだと思います。大きな家を建てるからといって家族の人数が多いわけではなくて、大きな家を建てる人は収納が多いということだと思います。うちは収納が多いので大きな家が欲しいという方と、逆にうちはそんなに物を持つタイプじゃないから収納はそんなにいらない、だからコンパクトな家になる、というのが1つの法則なんじゃないかと思います。
そう考えると、さっき言った収納率の目安の10〜15%というのは、果たして合っているのか?という問題になってきます。しかしここで、収納率の計算のルールとして、計算上収納として認めていいものは、ある程度の高さがあるものなんだそうです。例えば天井までの高さがあるようなウォークインクローゼットなどです。一方、例えばキッチンカウンターの下に棚をつけたり、造作を作ったりしたようなものは、なぜかわからないけど収納率には含まないらしいんです。
ただそれもおかしなものだと思います。以前私は収納の専門家の先生のセミナーを受けたことがあり、その時に聞いたことで今でも覚えていることがあります。それは、「何をどこに置くのかを考えて、無駄なく収納してあげるのが収納のコツ。大きいウォーキングクローゼットなどを作れば収納が解決するわけではない」ということです。
例えば当社のホームページに、私のキャンプレポートが載っていて、そこに私の車も写っています。その車の後ろには自作の棚がついていて、しっかりと隙間なくキャンプ道具が収納できるようになっています。高さを測って、無駄なく収納して、車中泊をしながらでもものに手が届くとか、電気をつけられるとか、そんな工夫を凝らしています。私の中では、あれこそが収納率だと思っています。
収納というのは、大きなウォーキングクローゼットをボンと取るのもいいんだけど、逆に大きなものを取りすぎちゃうと、その中に入った時の通路で消えてしまう感じもあります。
例えば同じ2畳の収納で比較してみます。図のような正方形型の収納で、右下に引き戸をつけて中に入る形だとします。そうすると、左半分と右奥は収納として使えますが、右下の1/4は人間が動くスペースになり、デッドスペースになってしまいます。一方、2畳を横に繋げて長方形の収納にして、開き戸にしたとします。こうすると、人間は収納の外側に立ってアクセスすればいいので、全てのスペースが収納として使えます。
また、収納についてよく言うことに、収納の懐があります。例えば食器収納・食品庫などで懐を深くしてしまうと、2列3列にものが並んでしまい、奥のものが見えなくて取りにくくなります。食品庫やお皿との相性で言えば、懐は30〜40cmぐらいの間にした方がいいです。畳数で考えると、畳の3分の1が30cmです。これをどれくらいにするかによって、人間の稼働範囲も違ってきます。
こういうことを考えるのが、上手い収納の秘訣の鉄則です。そういうことをすることによって、例えば家の面積が30坪だったとしても収納はたくさん取れます。実際に、昨年5月にオープンハウスをさせていただいたお家は、30坪で収納面積3.75坪、収納率12.5%の数字ですが、実際にはこの他に細かい収納を作っているし、オープンハウスに来られたお客さんでも「収納が足りない」と言われる方はいませんでした。
ネットで検索すると「〇〇率がどうだ」などと出てくるのはわかりますが、それだけで物事を解決できるわけではないのは当たり前です。また、「率」よりももっと重要なのは、何をどこにしまいたいか、そもそも何を持っているのかです。何を持っていて、持っているものは奥行・高さがいくつなのかを1回整理してみて、その上で「じゃあそれはここに仕舞いましょう」と考えるのが、本来の収入の考え方です。それがわからないのに「率がどうだ」などと考えても、結論は出ないんじゃないかと思います。
ちなみに、私は間取りを書くときに、収納率を計算しながら書いたことはありません。なんとなく感覚で書いていって、お客さんと話して「何が欲しい」などと言われて「それだったら〇〇と●●がありますよ」「こういうところは、当社はこうやっていますよ」などと考えていくと、先ほどの例のように、世間一般で言う収納率15%は大体クリアしています。
逆に、さっきも言いましたが、30坪の家で収納率10%だとしたら、多分ものは入らないと思うし、40坪の家でも10%は厳しいと思います。最終的にはそのお家でものの量が少ないか多いかによりますが、収納率15%というのは1つの基準じゃないかと思います。もしご興味があったら、みなさんも計算してみてもいいと思います。