今回は質問コーナーです。まずは以下のコメントです。
「家づくりの参考になるおすすめの本、早速購入してみました。「エコハウスのウソ」は体系的でわかりやすく早く出会いたかったです。「お金と健康で失敗しない間取りと住まい方の科学」はとても読みやすいですね。「住宅営業マンペこぺこ日記」は親類で日本ハウスHDに勤務していた人がいてその内情(経営トップは「神様」状態、過酷なノルマなど)を聞いていたのでやはりそうなんですねという感想です。病気の子供やお金など人様の人生に大きく関わる点において住宅業界はなかなか重い仕事だなと感じました。他には「住まいの耐久性大百科事典」は現物を知らない一般人に説明してくれているのでありがたい本です。
小暮さんのYoutubeは家づくりの大切な点を何度も発信されているので、その内容を自分もかみ砕くことができる様に勉強しています。」
私の遠い親戚の方も、某大手ハウスメーカーさんに営業で勤めていましたが、辞めて全然違うところに行きました。あと長野県にいる知り合いは、今は工務店を経営していますが、元々は某S水ハウスの営業をやっていました。その工務店に勤めている営業さんも、某S水ハイムさんにいたそうです。太田にいる私の一番仲のいい友人も、今は自分で不動産屋をやっていますが、元々はMサワホームさんの営業マンさんをやっていました。
でも、やっぱりみなさん最終的に言う事は一緒で「ノルマ・歩合制などの仕組みは、自分がその会社を選んだし、一生懸命頑張った分だけ貰えるわけだから、そこに身を投じて頑張るのはいい。疑問を感じるところは、契約を取るための、その間のお客さんへの説明や話の流れだ」と言います。今はさすがにないと思うけど「そんなことやってるから甘いんだ!」みたいなことも、昔はあったようです。
こういうことが、「住宅営業マンぺこぺこ日記」にすごくリアルに書いてあります。一部はフィクションもあるでしょうけど、概ね書いてあることは住宅業界にありがちなことだと感じます。でも一方では、そうすることがお客さんに決心をさせている、お客さんを誘導してあげている、という考え方になる場合もあります。「そういう風に営業マンさんが言ったから、清水の舞台から飛び降りることができました」と言われるのが嬉しいと思う人もいるわけです。
100%それが悪いわけじゃないです。ただ、それが行き過ぎてしまうと嘘になってしまいます。嘘をつきながら誘導していることになるかもしれないし、それを説明している営業マンさんも傷つくといいます。やっぱり一番いいのは、正直に言うことなのかと思います。
当社はもう起業から21年になります。当時は私も普通の家を作っていました。当時は、情報も高性能という言葉もなかったし、世の中でもそんなものは求められてもいなかったから、その時代において家を作っていました。
私は、悪いことをしたことは絶対にないし、手を抜いたこともありません。現状として、お客さんの家でトラブルが起こった(建物が傾いた、床が落ちた、窓が落ちた、外壁がずれたなど)ことは、1件もありません。でも今考えると、当時はメンテナンスコストが掛かる家を作っていたと思います。
それを踏まえた上で、今はなるべくメンテコストが掛からない家、時代に沿った省エネルギー住宅や快適な家、あとは寿命も延びているので、80歳になっても安心して暮らせる間取り計画などを提案しています。
しかし、そういうことをやればやるほど、価格も上がるし、手間もかかるし、職人さんの選定もすごく難しくなります。お客さんへの説明も、昔だったら「月々これだけで買えます」というだけで済むけど、今はそんな説明では全然売れません。そんなに安く・簡単に買えるものじゃないし、納得した上でそれだけのお金を払っていただくわけですから。
今の私がやっている家づくりは、気持ちは昔と変わらないけど、180度変わっていると思います。家づくりが変わるといろんなことが変わります。職人さんの選定、現場管理の方法、自分の話し方、説明の仕方、価格など、すべて変わっていかないとなかなか難しいと感じます。
コメントに「住宅業界は重い仕事」とありますが、本当にそうだと思います。それだけお金も掛かるし、作り方によってはそれが負債・負担になってしまうこともあります。例えばよくお客さんに話すことでは、こんな話があります。便利な場所に家を作るのは、逆に年を取った時には不便になる可能性もあるんです。住む場所はいろんな視点で見て考えて決めたほうがいいです。
コメントの最後には過分なることを言っていただいて、本当にありがたいです。私がYouTubeを発信する時に気をつけていることがあります。それは、実務的に学んだことを発信することです。セミナーにも出るし、本も読むけど、その後にそれを実践して「こうなった」と確信をして、そこで初めて「学んだ」だと思います。そこまで至ったことを発信をするようにしています。それから、自分自身が実際に実体験したことや、工務店さんなどに話を聞いて、ちゃんと自分で噛み砕いで納得したものをみなさんに発信したいと思っています。
でも、本当に最近のYouTubeはすごいらしいですね。あらゆる会社がYouTubeを始めて、明らかに同じ会社が動画を作っているのではと思うタイトルのつけ方などもあるようです。そんなのを見ても参考になるのかな?とも思います。失礼ですが、制作会社さんは住宅のプロではなく、企画会社さんです。
そんな話をお客さんとしていたら、先日お客さんから「そんな内容の記事を見た」と言われ、そのサイトを教えてもらいました。
ブログのタイトルは「家づくり系YouTubeはだいぶ汚染されている」です。3章構成で、“PASONAの法則”、“損失回避バイアス”、“じゃあどんな動画だったら質が良いのか?”と分かれています。
PASONAの法則は、有名なマーケティングの基本です。私も20代の時に勉強しました。「PASONA」は頭文字を取ったもので、「Problem:問題、Affinity:親近感、Solution:解決策、Offer:提案、NarrowingDown:絞り込み、Action:行動」です。
マーケティングの流れとして、まず問題を提起して、「嘘は言ってません」などと親近感を与えます。そして「この解決策をやるために、こういうことをあなたにお勧めします」と提案して、最後は「もしもこんな問題があったら、こちらをクリックしてください」と絞り込みます。そして「さあ今すぐです!」「3日で募集は締め切ります」となる感じのストーリーです。これに沿って作られているYouTubeが、最近はほとんどです。
これをYouTubeで繰り返しやっていると、毎回同じような動画になってきます。「◯◯10選」系の動画も、こういう感じになっているのかもしれません。そして、最後の「行動(Action)」で一番多いのが、「もちろん無料です」という言葉です。
そのブログには次のように書いてあります。ここでは一部抜粋してご紹介します。
「最近すごい類まれにみる、超テンプレPASONA法だ!と思ったのは以下の動画です。PASONA法の教科書です。この人の動画、初期の頃は落ち着いたトーンで有益な情報も多かったんですが、変な制作会社が入っているのか、最近はこんな方向性になってきちゃいました。
損失回避バイアスという言葉も、だいぶ有名になったと思います。(中略)人間は”損失を回避する”ということに非常に大きなメリットを感じてしまう生き物です。「〇〇すると10年後に得をする!」という前向きな文句より、「〇〇しないと10年後に損をする!」というネガティブを回避できるという情報の方が人間を動かしやすいよねというのが、マーケティングの定石です。
でも業者はいろんなしがらみでもあるのか、動画内でサムネイルほど過激なことを言わないケースがほとんどです。(中略)例えば以下は「知ったら採用しない●●の落とし穴」という煽りサムネイルですが、結局「●●はメリットもデメリットもありますので、しっかり考えて導入しましょう」というオチです。
この△△の動画と××社はコラボしてるので、たぶんyoutubeの制作会社が一緒なんでしょうね。■■県あたりに拠点がある制作会社なのかなと勝手に予想しています。」
書いてあるとおり、人間は成功する方法よりも失敗しない方法の方が好きなんです。私の動画では、「失敗しない方法」はあまり言わないと思います。私はそれよりも「こういうところを守りましょう」「優先順位をつけよう」など、前向きな方を言っています。ただ、それがウケるのは、一部の本当に前向きな物事の考え方ができる方だと思います。失礼ですが、そういう方じゃないと、当社で家は建たないと思います。
最近当社のお客さんは、20代の若い方が多くなりました。そういう中で、当社で建てる人の特徴で本当にわかりやすいのは、夫婦間がイコールの立場でお互いに話をしていることです。「俺はこう思う」「私はこう思う」と、お互いを認め合う感じでやっています。当社の家は、お互いが納得して建てていかないとなかなか難しいと思います。
ブログは以下のように続いています。
「じゃあどんな動画だったら質が良いのか?結局、動画の内容をちゃんと誤解なく伝えたい、という気持ちがあれば、煽るようなサムネイルを作るような思考にはならないと思います。そして視聴者としても、自分を刈り取るような内容ではなく勉強になるような動画を観たいのだと思います。観ることで勉強になり、戦う武器を手に入れることができるという動画こそが質の良い動画と定義した場合、そういう意味ですごく安心して観れるyoutubeは(後略)」
「刈り取る」というのは、急がせる、早く申し込ませるような感じだと思います。まともな人・会社であれば、そういうことはしないんじゃないかと思います。そして、お客さんが武器を手にできる、お客さんの勉強になるところをちゃんと与えてあげるのが、質の良い動画じゃないのかと言っています。それはそうだと思いますが、今の世の中はそういうことすら、わからなくなっているようにも思います。
そして、「すごく安心して観れる動画」を紹介しているのですが、うちの動画じゃないんです。なんと、モリシタ・アット・ホームさんです。森下さんに教えてあげたら、すごく喜んでました。
いずれにしても、サムネで煽っていたり、PASONAの法則とか、いつもストーリーが同じとか、そういう動画は制作会社さんが作っていて、場合によってはそんなに参考にならないかもしれません。この記事は、もしかしたらその会社の方が本音で話している内容じゃないのでは?という提起だと思います。そういう目で動画を見てみると、無駄な時間をかけずに、勉強になるし、頭の中もすっきりするし、もっと言えば工務店さん選びもうまくいくんじゃないかと思います。
私のYouTubeにも「工務店が見つからない」「◯◯県でおすすめの工務店は?」という質問がきます。これは前々から思っていますが、「見つからない」のではないんじゃないかと思います。本当はいるんだけど目に入らないとか、もしくは、見えているんだけどもっと欲をかいているとか、そういう人が多い感じがします。このテーマは、また別でYouTubeの動画かメルマガかで書いてみたいと思っています。