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 | 2024.08.20

①断熱・気密性能を上げると暑くなることもある②セルロースファイバー=高性能ではない事実③調湿コントロールは難しい

今回は質問コーナーです。

今日は本当に暑いんです。今日の群馬県の天気予報は40℃で、天気予報が40℃と言っているということは、実際にこの辺りの道路で測ると大体42℃ぐらいになっています。本当にこういう時代になってしまったなという感じがします。冬暖かい家もいいんですけど、夏涼しい家も作った方がいいと、個人的には思っています。

そうなると、くどいようですが、夏涼しい家は断熱と気密だけでは無理で、空調計画をセットにしないと絶対に無理です。断熱性能と気密性能をどんどん上げても涼しくならないし、他の動画でもお話ししましたけど逆にマイナスになることもあります。意外にこの辺りは、理解されてない住宅会社さんの実務者の方が多いように感じます。特に、UA値競争とかのアピールがすごい住宅会社さんは、以外にこの辺りを考えられていらっしゃらない可能性もありますから、お気をつけいただければと思います。

では本題に入ります。まずは以下の動画に対してのコメントです。最近はこんな感じに、古い動画に新しくコメントをしていただく方も多いです。

▼セルロースファイバーは最強なのか?
https://www.kosodate-sekkei.co.jp/blog/cellulose_fiber_saikyou/

「大工30年弱とセルロースファイバー断熱施工を20年やってます。壁施工は区切らなくて上からではなく中間部から工夫してふけばしっかり沈下を防ぐ事もできますし、スリーブや配線の指示などを大工が管理して、最適を毎回見極める事が1番大切だと思います。

愛媛県ですがセルロースファイバーのメーカー施工業者数社いますが、私と同じ機械使って同じくらいの現場でも吹き込み時間が短く、大工仲間の現場で他社の施工後に見学しましたが、なかなか残念な施工がほとんどです。セルロースファイバーで木材乾燥機なども製作してますが、調湿ではなく透湿や蓄熱のエビデンスや他の断熱材との対比もセルロース施工の仲間で定期的にしてますが、いろいろ面白い結果になってます。」

元の動画で「セルロースファイバーを壁に吹き込む時に沈下しないようにするには」という説明を私がしたのに対して、実務者の方から「セルロースファイバーが沈下しないようにこういう風にやっています」ということと「残念ながら沈下しやすい施工されている方がかなり多いです」という指摘です。これは私も感じる時があります。

なぜかわからないけど、おそらく大工さんでは「セルロースファイバーはすごく高性能だ」と思っている人が多分多いんじゃないかと思います。当社でも、たまに応援で来てくれた大工さんと話した時に「このセルロースファイバー、こんなに吹くんですか」と言われたので「だってセルロースファイバーは性能が悪いから、これぐらい吹かなきゃダメなんです」と言うと「え?セルロースファイバーって性能いいんですよね?」とびっくりされたことがあります。

断熱性能・熱伝導率だけで言うと、セルロースファイバーは断熱材の中では一番性能が低いです。熱伝導率(熱の伝達のしにくさ、熱を与えた時の向こうへの伝わりにくさ)で言うと、伝わりにくい、つまり断熱がいいという理解ですが、そこで言うと一番いいのは、トップはネオマフォーム・キューワンボードです。あれは大体、セルロースファイバーの倍ぐらいの性能があります。

次にいいのは、30倍発泡・30倍ウレタンです。ウレタンの場合、メーカーさんが言う実験値はキューワンボーと同じですが、現場発泡ウレタンという現場で吹くものは、施工によって数値のばらつきがあると思っています。この次にグラスウールがきますが、グラスウールはランク分けがあり、超高性能・高性能・普通・普通以下、という感じです。この辺りは密度によります。

密度というのは、1m四方の箱の中に入っているグラスウールの重量のことで、多ければ多いほど重くなり、高性能になります。例えば当社が使っているものは36Kというもので、1m四方の箱の中に36キロの重さのグラスウールが入っているものです。普通以下の性能のものだと、10Kというものもあります。つまり、一番性能が高いものと低いもので3.6倍違うということです。

この次あたりに、発泡ウレタンの100倍がきます。最近だと120倍ウレタンもあるようですが、私は使ったことはないし、絶対使いたくないと思います。この次か同じぐらいに、セルロースファイバーがきます。その次には羊毛などがあります。

この中でどこを平均とするかは難しいけど、なんとなく平均を考えて線を引くと、やっぱりセルロース・羊毛は、性能は高くはないのは事実です。なぜ高くないのかは動画・メルマガでも何回も言っていますが、このような天然素材のものを使って高性能にするのは、工夫ができないレベルのものなので難しいんです。それでも性能の低いものを使う理由は、好みもあるし、気密の取りやすさとか、値段などがあります。当社もセルロースファイバーはいろんな理由で使っていますが、それでもセルロースファイバーは性能が高いという認識は、私は違っていると思います。

ただ、この方も言っているように、セルロースファイバーは熱容量が高いというエビデンスがあるのも事実です。熱容量というのは、熱を蓄えて他に伝えない力です。それはそれで、数字だけで表せないところなので難しいです。あと、この方がすごくちゃんとやられている方だなと思ったのが「調湿ではなく透湿や蓄熱」と言葉をちゃんと書いていらっしゃるところです。

セルロースファイバーの話が出たので、セルロースファイバーの調湿について今回また改めてお話をしたいと思います。調湿というのは、実は難しいんです。調湿するということは、1回水分を含み、それを出すということです。セルロースファイバーも確かに紙ですから、水分が発生した時に吸い込むという点は確かにあります。ただ、その吸い込んだ水分を出す方向によって全く変わってしまいます。

例えば壁の中のセルロースファイバーが、梅雨の時期の室内の湿気を吸い込んで、その吸い込んだ湿度を外側の通気層に出してくれれば、家の中は乾燥するからいいですよね。でも逆に、吸い込んだものが仮に室内側に行ったとしたら、吸い込んだものをまた出しているんだから、いいことはないですよね。はたまた、外の湿気を吸い込んで室内側に出していたら、どんどん悪くなります。

湿度というのは、そんなうまい具合に移動できません。湿度・温度が変化する時にどういうことが起こるのかというと、まず原則として、暖かいものが冷たい方に移るということがあります。もう1つは圧力差です。それで勝手に変わってしまうので、自分で意図してそれをコントロールするのは難しいです。調湿というのは、はっきり言ってかなり難しいというのが事実だと思います。私も珪藻土を使っていますが、珪藻土を使ったからと言って、ぐんぐん吸ってぐんぐん出すみたいなこともありません。

また、当社が使っているのは北海道の珪藻土のみで作っているものです。一般的に売られている珪藻土っぽいものよりは実験値もいいし、24時間あたり何十グラム以上という基準もクリアしています。かといって、当社のモデルハウスを見てもらえばわかるけど、それがこれだけ塗ってある空間で、床が無垢で、天井はシナベニヤが貼ってあるような、かなり調湿しやすそうな空間でも、それだけで夏に室内がカラッとするなんてことはありえないんです。湿度をコントロールするには、太陽の力・エアコンの力など、そういうものでやらなければほぼ無理なんです。

これはセルロースの批判をしているわけではありません。調湿・湿度のコントロールというのはそういうものだとわかると、そんな簡単に「これを使えば調湿できます」なんて言えるはずがないんです。もしそういうことを言われる住宅会社さんがいたら、私が言うのもなんですけど、私のことを信用しているかどうかという問題もあるけど、そういうものだと思い返してもらった方がいいのかなと思います。みなさんの参考になれば幸いです。