小暮:
これは答えづらい質問なんですが、我々はよくオール樹脂サッシを使ったほうがいいって言うじゃないですか。国産の三大メーカーさんがあります。YKKAPさん、リクシルさん、エクセルシャノンさん。このそれぞれのメーカーの樹脂サッシの長所とか短所とかを教えていただければと思うんですけど。
松尾先生:
樹脂サッシに関しては、一番老舗はエクセルシャノンさん。エクセルシャノンさんは樹脂サッシしか作っていません。でもエクセルシャノンさんは、YKKAPとリクシルに比べると企業規模が圧倒的に小さいので、知名度がそんなにない。ただし、乾電池からスタートした高断熱の元祖メーカーなので、性能は一番高いと思いますね。特にやっぱり気密性能はここの会社は一番高いと思います。
小暮:
ドレーキップとかってエクセルさんだけですよね?
松尾先生:
YKは2アクション窓ですね。ただし、枠がすごく太い。あと、掃き出し窓でも掃き出しにならないっていうこととかがあったり。その辺りが正直ちょっとデザイン的にはどうかなってところはありますね。枠の太さでいうと、それをぐっと細くできたのが2010年頃からスタートしたAPWっていうシリーズです。気密性はエクセル社のものよりちょっと落ちるかなっていう感触はありますが、別に全部APWを使っても、僕らでもほぼ100%の建物がC値0.2から0.5の間で収まるんで、別に引違い窓を使っても問題ないかなって思います。
小暮:
最近、430プラスが出ましたよね。
松尾先生:
それは使ってないですね。
小暮:
この中に断熱材がいくつかあったんですよ。ちょっと今度使ってみようって。
松尾先生:
KRっていうのがまた違ったものですよね。それで、エルスターっていうのが最後発の樹脂窓になるんですけど、これは最後発なだけあって枠の太さが一番細いです。そういう意味では日射取得量は増えるんですけど、これはリクシルさんの特徴なんですけど、樹脂アルミ、それから樹脂問わずに気密が弱い。
小暮:
私も昔、リクシルさんの樹脂アルミを使っていて、やっぱり気密がなかったと思います。
松尾先生:
気密測定をやると気密が出にくいなっていう感じがあるのと、5年経たない間に取っ手のところの部品が割れちゃうとかね。そういうところで、ちょっと華奢だなって感じはありますね。
小暮:
デザイン重視って感じがしますよね。
松尾先生:
そうですね。細いし、デザインは綺麗だけど、気密が弱くてちょっと耐久性っていう意味で華奢なのかなっていう。大きく分けると、そういう特徴、それぞれ長所・短所があるかなって感じがしますね。
小暮:
50年とか60年とか、そういう長い単位で住むっていうことを考えると、エクセルシャノンさんがいいのかなって感じはしますね。
松尾先生:
ただ、じゃあ窓を50年60年って使い続けるのかって言ったら結構きびしいんじゃないかなって思いますね。アルミサッシだろうが樹脂アルミだろうが、やっぱり40年以上経つサッシを見ると、相当傷んでいますから。まぁ30年とか言ったらどうってことないですけど、40年50年っていう領域に入ってくると、結構窓も、全ての種類のサッシにおいてゴムの気密性みたいなのも切れてくるし、それ自体を交換しなきゃいけない頃合いなのかなって気はしないでもないですけどね。
小暮:
よくアルミだったらもつんじゃないの?っていう人もいるんだけど、実際それはなかなか難しいかなと。
松尾先生:
アルミがどうこうっていうよりも、パッキン類とかローラー関係とか、そういうところの観点からして、交換部品が40年50年とかないですし。でも今までは住宅を30年40年したら解体するっていう文化があったので問題にならなかったけど、これからはそういうところが顕在化してくるだろうなと。
小暮:
じゃあ30年とか35年してサッシが痛む時に、どういうふうにすればいいのか。
松尾先生:
ヨーロッパなんかはうち付け工法っていうのが一般的になっているので、窓のところだけスポッと外せるようになっているんですね。日本の場合は、外壁を壊さないと窓っていうのは外せない仕組みになっていて、そこはやっぱり変えていかないとダメだと、窓関係者はわかっているけど、なかなか簡単にはできないという。おそらく僕らがじゃあ自分が設計したやつが30年後に窓を交換したいと言われたら、今はカバー工法とかっていうのもあるんで、窓の枠はつけたままで窓の中にもう1回窓をつけるみたいな対応をしていく感じですね。それでもう1回交換したら、どんな人でも生涯死ぬまでいけるんで。現時点での商品構成からするとその辺が落とし所じゃないかな。
小暮:
逆に、既存の樹脂サッシを使って、樹脂の枠だけ残しておいて、その中にまた樹脂サッシを入れたほうが安いんじゃないですかね。
松尾先生:
そういうのもありますね。
小暮:
実際に今は、オーダーでどんなサッシでも作りますもんね。そっちの方が安い気もしますね。
松尾先生:
大きく分けて2つあって、例えばYKKAPさんだったら乾式で既存の枠の中に入れて作るのが一つと、それから発泡工法っていうのがあって、1cmくらいだけ隙間を開けて仮固定をしておいて、そこで現場発泡ウレタンを吹いて固定する方法で、これは湿式と呼ばれるやり方ですね。その2つが今、選択できる方法かと思いますね。
小暮:
いずれにしても、これからの家づくりって昔と違ってね、30年までに壊すわけじゃないから、窓の交換はどうしても考えちゃうなと。
松尾先生:
内窓にすると断熱性が上がるんだけど、30年経ったどんな窓でも、クレセントのところが硬いとか、どうしても引きがスムーズに動かなくなります。今のサッシは30年前に比べて出来がいいから、30年後40年後でも問題ないかもしれませんが、なんとも言い難いところはありますよね。
小暮:
それが本当の話ですよね。アルミだからいいとか、樹脂だからとかそういう問題じゃないですね。じゃあアルミクラッド、木のやつ。あれなんかはどうなんですかね。
松尾先生:
木製サッシは一番いいですよ。断熱性も優れているし、耐候性もいいけど、その代わり値段も一番いいですから。今、僕らが最低限と言っているAPW330っていうものに対して、平米あたりの単価が普通のアルミサッシに比べて4倍するんですね。アルミクラッドがつくと多分5倍くらいになるんじゃないですか。だから1棟あたりAPW330だったら値段が90万とかそれくらいの感じでしょ。それが4倍って言ったらちょっとね。だからリビングとか勝負する窓だったら僕らも結構使いますけど、全部はかなり厳しいなと。
小暮:
400万だったら、多分30年経って取り替える方が安いですね。これが現実の話ですよ。
松尾先生:
だから木製サッシを使いたいですって人はうちでも多いんだけど、みんな途中で心が折れるのは見積もりを見た時ですよね。
小暮:
たまにいますけど、もしやるだったらリビングの大開口だけにするとかね、それくらいにしないと。
松尾先生:
そこだけで100万超えること多いですから。
小暮:
全部使ったら管理も時間がかかるっていうね。
松尾先生:
もし使うんだったら日本人の性格からするとアルミクラッドがいいと思いますけどね。あまり塗ったりとかできないので。
対談第三弾
Vol.1 Ua値やC値だけでは家の性能は語れない
Vol.2 太陽光発電は得か?損か?答えは明確
Vol.3 もしもの大災害は必ず起こると考える
Vol.4 住宅会社の営業トークは嘘だらけ
Vol.5 営業マンの嘘を見抜く方法
Vol.6 家を知らない人が家を売る怖さ
Vol.7 「断熱材で調湿」は「濡れた布団で寝る」のと同じ
Vol.8 窓と日射について抑えておくべき基本
Vol.9 営業マンより消費者の方が知識量は上
Vol.10 YouTubeの中にもたくさんの嘘がある
Vol.11 耐久性のポイントは耐震性と水害対策
Vol.12 おすすめできない製品・部材とは
Vol.13 カタログ数値に踊らされてはいけない
Vol.14 適正な断熱性能はこのように考える
Vol.15 30年先を考えたサッシの選び方
Vol.16 いつまでも美しい家のデザインとは