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プロが語る家づくり
 | 2021.03.28

Vol.13 カタログ数値に踊らされてはいけない

小暮:
あとは何かありますかね、先生の中で。

松尾先生:
あとは防蟻処理の話ですね。防蟻処理も、来年の2021年には住宅外皮マイスターという資格ができるので、あれをとっている人が社内に一人いるかいないかだけでも一つ目安になってくると思います。いろんな耐久性の集まりに僕も出てるんですけど、シロアリにはどれがいいのかをここで決断するのは難しいんですけど、一つの目安として5年に1回再施工しなきゃいけないものなのか、半永久的に効果が持続すると謳っているものなのかってところは、レベルの違いとしてあげてもいいのかなって思います。

小暮:
ホウ酸か、農薬系かみたいなところですよね。

松尾先生:
ホウ酸とかは一応半永久的と言われていますけど、それとあとは加圧注入だったりね。

小暮:
ファームガードとかありますよね。

松尾先生:
ただランニングコストが結構すごいですからね。

小暮:
5年に1回とかで15万とかしますからね。50年もすれば100万か200万とか。

松尾先生:
工務店さんとしては結構実入りはいいみたいですけどね。今まで、断熱はG2、耐震等級3っていうのがあったんですけど、耐久性は耐久性みたいな曖昧な言葉でしか言えなかったんですけど、そこの耐久性のところが2021年以降は住宅外皮マイスターっていう、それが持っているか持ってないかってところで問える時代になるかなって思いますね。

小暮:
あと耐久性ってところで、フローリングってどうですかね。

松尾先生:
フローリングについては、僕らは無垢のやつしか使わないですけど、わかる人にはわかるでしょうけど、丸い木をそのまま切り取ってこの部分を取りましたっていうのを無垢って言うんですけど、ほとんど大手メーカーさんとか安い建売屋さんが使っているのは、木のチップを接着剤で固めたような表面に本当に昨日桂むきしたような薄いやつを貼り付けているみたいなやつが多いですよね。その表面にポリウレタン塗装がしてあるみたいな感じなんですけど、あれって紫外線が当たるところとかは10年くらいでボロボロになるんで、長くは持たないですよね。

小暮:
うちも昔使っていましたけど、白い床なんかは10年くらいすると黄ばんじゃうんですよね。プラスチックは黄変するっていうかね。

松尾先生:
長く使うことを考えると、やっぱり別に高い木じゃなくてもいいんですけど、本物の無垢の木を使った方がいいなと思いますね。無垢じゃない複合フローリングってやつはできた瞬間が綺麗でそこから先はただただ傷んでいくだけみたいな話になるんで、無垢のフローリングの場合はできた時も綺麗ですけど、そこから汚れはするけど味わいも出てくるっていうね。できた時が一番いいのって寂しいなっていうのもありますね。

小暮:
あと断熱材も部材によって耐久性は変わるんですかね。

松尾先生:
つい一週間くらい前も某メーカーの研究資料っていうのを見せてもらったんですけど、今、「発プラ系」って言い方をするんですけど、押し出し法ポリスチレンフォームっていうのが正式名称です。その押し出し法ポリスチレンフォームでも熱伝導率が0.02、そういうのが出ているのがあるんですけど、あれって結構無理をして出している数値なんですね。製造直後はその辺りが出ているんだけど、実際流通ルートを回って現場に行くまでには、製造が完成してから何ヶ月とか経つわけじゃないですか。その時点で測ったら、もう0.28くらいまで落ちてるみたいな。

小暮:
なるほど。

松尾先生:
あと、例えば現場発泡の断熱材が多いですけど、現場発泡の断熱材も0.036とか水とか空気みたいな感じで、普通のガスを使っているやつは別にそんな経年で落ちないんですけど、0.02前半とか出している高性能仕様のやつって特殊なガスを使ってるんですね。特殊なガスを使っているやつは、やっぱり落ちやすい。これって車の燃費に似ているんですが、例えばカタログ燃費がリッター15kmっていう車があって、実走は11とか12とか走ったりするんですよね。なので、エアコンもそうなんですけど、高性能品ほど、カタログ値の乖離が大きいというか。

小暮:
わかりやすい例えですね。

松尾先生:
断熱材の場合はそれだけじゃなくて、これは今問題になりつつあるんですけど、本当は押し出し法ポチエチレンフォームってなると0.028のものなんですね。それを無理やり、力技で0.020にしたりしているような類のやつっていうのはどうしても落ちちゃいますね。そういう意味では、例えば安いんですけどグラスウールとか、もしくは発泡スチロールとかね。元々が高性能なネオマフォームとかね。ああいうものは経年経っても性能が落ちにくいと言われています。押し出し方ポリエチレンフォームっていう0.028が限界のものなのに、それを無理くり0.020にあげたみたいな。現場発泡なのに0.02前半みたいな、やっているやつは落ちるっていうのはどうかと。

小暮:
現場発泡ってあれは0.0368とかそんなイメージですけどね。

松尾先生:
そういうやつは落ちないと言われていますね。

小暮:
今、コンマいくつの勝負ですよね。

松尾先生:
僕らがそう言うのは、今こうやって暗記しているのを喋っていますけど、根拠出せって言われたら全部資料持ってますからね。

小暮:
実際はその計算の時は使っちゃうじゃないですか、0.019とか。すごいと言われるけど、実際どうなのかってね。

松尾先生:
そう意味では僕は、今現在、中はグラスウールで外は発泡スチロールっていうのが多いので、どっちも劣化しない組み合わせだなと思っていますけど。

小暮:
私も、なるべく壁の厚さをとって、グラスウールを入れて気密シートを貼ってやっているっていうね。あまり高性能すぎるものは使わない、当然高いですしね。コストがあがっちゃうのでね。

松尾先生:
やっぱり、キッチンでも断熱材でも何でもそうなんですけど、普及している商品ってすごくコスパの良いところが取れますよね。特殊製品って何でも特殊な値段設定がされているので、特殊製品を使えば使うほどコスパ的には悪くなるっていうのは基本セオリーですよね。

対談第三弾

Vol.1 Ua値やC値だけでは家の性能は語れない
Vol.2 太陽光発電は得か?損か?答えは明確
Vol.3 もしもの大災害は必ず起こると考える
Vol.4 住宅会社の営業トークは嘘だらけ
Vol.5 営業マンの嘘を見抜く方法
Vol.6 家を知らない人が家を売る怖さ
Vol.7 「断熱材で調湿」は「濡れた布団で寝る」のと同じ
Vol.8 窓と日射について抑えておくべき基本
Vol.9 営業マンより消費者の方が知識量は上
Vol.10 YouTubeの中にもたくさんの嘘がある
Vol.11 耐久性のポイントは耐震性と水害対策
Vol.12 おすすめできない製品・部材とは
Vol.13 カタログ数値に踊らされてはいけない
Vol.14 適正な断熱性能はこのように考える
Vol.15 30年先を考えたサッシの選び方
Vol.16 いつまでも美しい家のデザインとは