小暮:
あと、もう一方で蓄電池はどうですか。あれを太陽光とセットして、日中に太陽光で電気を蓄電池に貯めておくと完全に自家発電だけで生活できるようなイメージがあって、そんなCMもやっていますが、実際のところどうなんですかね?私はまだ早いような気がするのですが。
松尾先生:
蓄電池は現状としてはですね、だいたい今、例えばシャープとかパナソニックみたいな、そういった日本の電池メーカーの家庭用蓄電池がだいたい1KWh当たり実勢価格で安くて15万円。よくあるのは25万位していますね。それってやっぱり実際は物凄い高いです。
小暮:
確かに高いですね。
松尾先生:
例えば昼間太陽光で発電して貯めておいて、皆が一番使う夜の7時から11時位までの間に使うみたいなやり方をするとして、電力会社と契約しなくて済むみたいなことでメリットを出そうとしたり、もしくは深夜電力の安い時間帯に貯めておいて昼間使ってみたいな形で、金銭的メリットを出そうとすると、KWh当たりだいたい6万円ぐらいになってこないと元が取れない。
小暮:
6万円というのはないですね、まだないですね。
松尾先生:
今ないですね。それが今度4月ぐらいに出ると言われてるテスラのパワーウォールというやつに関しては、KWh7万円ぐらいです。ただし取付け費用を含めるとたぶん10万円近くなるのかなと思いますが、一応物だけで見ると7万円ぐらいになっています。それがターニングポイントになって、全てが変わるだろうなという位のインパクトは出る気がしますね。
小暮:
あと松尾先生がよくおっしゃるのが、パワーウォールを買わなくてもいいから、中古のリーフを買って、充電するのが一番安いって。
松尾先生:
家庭用の置き型のやつで一番安い蓄電池はやっぱりパワーウォールという話になるんですけど。あれが容量が13.5KWhなんですね。一般の方は13.5KWhって聞いてもさっぱり分からないと思うんですけど。普通の一般家庭が1日で消費するのが、年間おしなべるとだいたい10~14KWhぐらいなので。
小暮:
そうですね、14ぐらいですかね最高。
松尾先生:
なので、テスラのパワーウォール2というのが、容量が13.5KWhなので、結構いい線いってるんですよ。それでものの値段で99万円だったかな?例えば日産のリーフというのが、日本では一番有名な電気自動車ですけど。あれが今40KWhですかね。
小暮:
40です。新しいやつね。
松尾先生:
ということは、あれがフル充電になってると、14使ってる家でも3日。10使ってる家だと4日分、普通の生活をしても大丈夫なぐらいの電気量が貯まってるんですね。なら仮にですねそれに7万円という単価を掛けると、7×4=280という話になるんです。電池だけで280万かかっているという話になるんですよ。
小暮:
でもあの車の値段は…。
松尾先生:
350万くらいですよね。そうすると車、タイヤもハンドルもシートも全部含んで70万で出来てるのかという話になるんですけど。だから車の蓄電池というのは恐ろしく安いんです。だから車として見たら、まだまだガソリン自動車に比べたら高いじゃないかって皆さん思うと思うんですけど、電池として見たらもう激安なんですね。
小暮:
今の型はちょっと確かにバッテリー容量が大きくて良いんだけど、新車は高いから中古の1個前のを買って、充電専用とは言いませんけどね、たまに乗って。
松尾先生:
そうですね。だから何て言うんですか、自賠責も保険もない状態で、もう置物として置いといてというのは。
小暮:
ありですね。
松尾先生:
たぶん探せば60万から90万位でリーフの中古ってあると思うので。仮にその昔のやつって32KWh位だったので、それが半分まで効率落ちてるとしても16KWh分ぐらいはあります。
小暮:
だから、中古のリーフを買って蓄電池として置いておくってのも一つの手ですね。
松尾先生:
まぁまぁ裏技。ただね電池類ってよく言われるのが、使えるのが10年位。
小暮:
あー、あんまり古いとね。
松尾先生:
ただ10年でじゃあ0になるのかと言ったら、0じゃないと思うんですよね。たぶん皆さんもスマホとか長いこと使ってると、充電できる量というか持続時間が短くなってきたなという実感とかがたぶんあると思うんですけど。10年経ったら0になったり爆発するという訳でもないので。ジワジワ、ジワジワ落ちていくんです。
小暮:
結論としては、蓄電池はちょっとまだ早いかなということですかね。
松尾先生:
元を取るという意味で言うと、もう確実に早い。ただし、災害時のリスクヘッジとしては、保険として考えるならありです。何かあった時のために困らない様に、日頃少しずつ積立てておくというのが、もしくは先払いしておくというのが保険の考え方ですよねという。それから言うと蓄電池というのはもう見事な保険です。
小暮:
私だと、あんな蓄電池がなくてもて、キャンパー用の小さいのを1個持って、後はカセットコンロ持って、LEDの太陽熱の照明あれば、何とか暮らせるんじゃないかと思いますね。
松尾先生:
高断熱高気密住宅があれば大丈夫ですよね。
小暮:
無暖房だって15℃ぐらい温度ありますからね。
松尾先生:
まぁそうですね、無暖房でも10何度は全然あるので。
小暮:
日射が入れば全然、夜だって20℃ぐらいありますからね。そこでちょっと厚めの服着てガスバーナーでこうやって飯食ってれば、災害時でもたぶん1週間もあれば復旧するでしょうから。
松尾先生:
はい。保険てかければかける程、キャッシュフローが悪くなる。でもまったくかけずに車には乗れない。その辺もその人の価値観が大きいですよね。
小暮:
まぁ価値観ですけどね。でも蓄電池だってどんどん劣化しますよね。さっき松尾先生がおっしゃった10年位で、実際に半分位になるんですかね。
松尾先生:
そこは僕にも分からないですね。
小暮:
何かちょっと一説には半分から6割とか言われていますよね。
松尾先生:
物凄い高価なやつは10年経ってもあんまり落ちないやつも実はあるんですけど。そうなるとさっき6万とか7万って言ってた様な金額とはまたちょっと違う単位の値段になる電池になってくるんで。後は技術革新に期待するしかないですね。蓄電池は2030年とか40年に今より4割ぐらい安くなるんじゃないかという話もあるんですよ。あと、軽くなる、持続時間が長くなる、充電時間が短くなるって言われています。今はリチウムイオン電池が主流ですけれども。次は全個体電池というのが。
小暮:
全個体電池。
松尾先生:
全個体電池というやつですね。その辺がメジャーになってくるかもしれない。もう太陽光発電に関しては、もうそこまで大きな技術革新はないかもしれないですけど。蓄電池に関しては法式自体が変わる可能性が、10年20年というスパンで見ると出てくる。そうなるといろんなことが変わってくるのかなという風に思いますね。
小暮:
そう考えるとやっぱり、家の性能をちゃんとやっといて、太陽光を載っけてね、それでリスクヘッジすると。ちゃんと日射取得・日射遮蔽すればちゃんと暖かくなるじゃないですか。私の持論は、高気密高断熱住宅さえあれば、災害時は小っちゃいバッテリーがあって、ガスバーナーで何とかして、将来蓄電池が安くなった時に付ければいいんじゃないかと。
松尾先生:
そうですね。もしくは電気自動車を買う。電気自動車はどっちにしても車として使えるので。ただ電気自動車もまだ安くはないし、そんなに長くも走りにくいし。今はいろんな意味で電池関係は移行期。でもまだ手を出すにはちょっと早いかなという時期かなと思います。
対談第二弾
Vol.1 最低の断熱基準さえも義務化できない国
Vol.2 HEAT20 G2でも欧米では最低レベル
Vol.3 全館空調はメンテナンスコストに差が出る
Vol.4 太陽光発電はつけないと損をする
Vol.5 現時点では蓄電池より〇〇〇の方がいい
Vol.6 断熱材は 材質×厚みで考える
Vol.7 外断熱か、内断熱(充填断熱)か
Vol.8 木造と鉄骨はどっちが丈夫か?
Vol.9 大手はなぜ樹脂サッシを使わないのか?
Vol.10 住宅会社を見分けるチェックリスト
Vol.11 太陽に素直な設計
Vol.12 中古住宅リフォームの注意点