松尾先生:
今いった基準より上の基準として「HEAT20 G1」があり、もう一個上に「HEAT20 G2」というのがある。今、事実上のこの国のトップレベルの基準というのはこのG2です。
小暮:
今度はそのG3が出るんですよね。
松尾先生:
そうですね。今国交省近辺の会議で打ち合わせされてるのがそのG3というレベル。これがもう本当の究極の基準という感じなんですけど、まだ発表されてないですね。今日は2020年の1月末ですけれども、今の時点ではまだちゃんと法的には言われてない数字ですね。
小暮:
結局国の基準ってなんでもそうですけど、耐震等級もそうですよね。やっぱりここは最低守らなきゃいけないよという基準ですよね。
松尾先生:
そうですね。だから例えば僕もお客様に説明しますけれども、耐震等級1というのは、阪神大震災とか東日本大震災レベルの大地震がきたときに、命を落とさないレベルです。これを目標に作られている法律なんですね。決して財産を失わないレベルという風にはなってないんですよね。
小暮:
住み続けられるかどうかって話ですよね。要は耐震等級1だとその後に、補修をしながら住み続けるというのは、かなり難しい。ローンが残っちゃってると、もうダブルパンチみたいな感じですよね。なので耐震等級1というのはできれば避けた方が良いんだけど、国としては命が救えるからそこは絶対守ってねという話ですよね。
松尾先生:
そうです、そうです。それを破って世間の話題をかっさらったのがあの姉歯さんという建築士やったんですよね。
小暮:
その辺りがスタートなんですね。いずれにしても皆さん勘違いしないようにしてもらわなくちゃいけないのは、国の定めてる断熱基準とか耐震基準というのはあくまでもここは絶対守らないといけないというボトムなので、それをやってるから凄いんだというのはまったく違うんですね。ここはちょっと勘違いしてもらわない方が良いかなと思うんですね。
松尾先生:
もうまったく違いますね。
小暮:
さっき松尾先生がHEAT20という話をされたじゃないですか。やっぱりじゃあこれから家を建てる時に、このHEAT20という基準で家を建てた方が良いということなんですかね。
松尾先生:
HEAT20というのは錚々たる大学の先生が中心に築かれてる半官半民の団体の名称です。HEAT20の中でもG1という、グレード1というのとグレード2というのがあって、グレード1あたりが今大手住宅メーカーの中心を占めてるレベルになりますよね。
小暮:
そうですね。皆さんだいたい、高断熱仕様というとQ値で1.9とかね。その位が多いですね。
松尾先生:
そうですね、UA値でいうと0.575~6辺りかな。その辺りがG1と言われる所ですけれども。大手住宅メーカーの大半が今そこですね。小暮さんのところのような上位3%位の工務店さんか、もしくは大手住宅メーカーの中でも一条工務店さん、スウェーデンハウスさんみたいなごく一部の住宅メーカーがやっているのがG2ですね。これが事実上のトップランナーです。
小暮:
なるほど。
松尾先生:
この辺の基準はまぁまぁちゃんとした、ある種の理想的な住宅としての基準です。さっきの5つの基準みたいなボトムの基準ではない。でも今、G2って日本では最高等級と認識されていますが、フランスやアメリカでは最低レベル。国の定める最低基準がだいたい日本のG2レベルぐらいにあります。
小暮:
最低基準ですか。
松尾先生:
日本では義務どころか推奨中の推奨、出来たら良いよねというレベルが、アメリカとかフランスでは国が定めるボトムになっている。
小暮:
こんなに違うんですね。
松尾先生:
よくね、国の人とかにそのことを言うと、例えばドイツとかは寒冷地だという人がいるんですけど、僕が言ってるのは、あくまで温度域を揃えた状態での比較です。例えばサッカーとラグビ―どっちが強いという話じゃなくて、ちゃんと同じ土俵で揃えた上でそれ位違うんです。
小暮:
でも世界の基準がそうなっているのに、なぜいまだに日本がこんなに低いのか、よく分かんないですよね。去年から義務化されるべき最低限の基準すら、どんどん延期されてしまう。残念ですね。
対談第二弾
Vol.1 最低の断熱基準さえも義務化できない国
Vol.2 HEAT20 G2でも欧米では最低レベル
Vol.3 全館空調はメンテナンスコストに差が出る
Vol.4 太陽光発電はつけないと損をする
Vol.5 現時点では蓄電池より〇〇〇の方がいい
Vol.6 断熱材は 材質×厚みで考える
Vol.7 外断熱か、内断熱(充填断熱)か
Vol.8 木造と鉄骨はどっちが丈夫か?
Vol.9 大手はなぜ樹脂サッシを使わないのか?
Vol.10 住宅会社を見分けるチェックリスト
Vol.11 太陽に素直な設計
Vol.12 中古住宅リフォームの注意点