松尾先生:
例えば今、構造にしても冷暖房設備にしても、何とか工法とか何とかシステムみたいなもののフランチャイズになりませんか?と、頼みもしないのにカタログとかがわんさか送られてきませんか。ああいうものがカタログに載っていると凄く良い様にお客さんは見えるのかも知れないんですけど、実は、結構裏話に近いですけど、あれをやっているという事は、物凄いそこに利益が乗っているってことなんですね。
小暮:
そうですね。
松尾先生:
大体ああいうものがいっぱい載るとですね。例えばもっと本当は安く出来るはずなのに、凄く高くなってしまうんです。ああいうものは社内に技術力が無い場合に外注で賄って貰うって事ですから。また、社内にそれをこなせる技術者が居ないっていう事の一つの証明なんです。
小暮:
自分の所でちゃんと出来ないから、そういうものをパッと付けりゃOKって話ですから。
松尾先生:
そうですね。冷静に考えれば分かる話だと思うんですけれども。逆にカッコよく見えたりする人もいる。
小暮:
ウチも昔、制震ダンパーをちょっと検討した時がありまして、メーカーさんを呼んで話を伺った事もあるんですけど。やっぱり伺ってみると消費者のことを考えていないんですよ。本来は耐震等級3を造った上で、これも付ければ更に良くなるというものなのに、耐震1に付けちゃうみたいな。
松尾先生:
まともな制震ダンパー屋さんなら、耐震等級2とか1ではウチに来ないで欲しいって言うんですよ。でも多分一般の人もそれから工務店さんも、小仕掛けが好きと言うか。パッと見は地味な、壁倍率とか、配置のバランスのような事よりも、こんな装置付けました!何とか工法です!みたいな事の方がいいみたいな風潮がありますよね。
小暮:
わかりやすいのですかね。
松尾先生:
インスタントに説明し易いんでしょうね。
小暮:
本当だったら、ちゃんとした設計をして、構造計算してパネルをきちっと張って、ビスの間隔をちゃんとやるっていうのが基本じゃ無いですか。
松尾先生:
料理で考えてもらったら結構分かりやすいんですけど。どっかのフランチャイズに加盟して、そのレシピ通りの食事を出しているような一流料理屋さんがあるかって話ですよ。他業界に当てはめれば当たり前の事が、住宅業界になるとぼけてしまう。
小暮:
やっぱり大きな会社さんとなると、棟数も多くて日本全国でやるから、平均化を図るためにそういう設備を付けた方が早いんじゃないかってのもあるのかもしれない。ただ地元の工務店ならね、自分でキチっとやればいいのを、大手さんの真似をしてそういう機械をいっぱい付けるっていうのは、ちょっと違うんじゃないかなって気がするんですね。
松尾先生:
大手さんっていうのは、例えばトップクラスになると年間1万棟ぐらいやっている訳です。仕入れはなんでも大量購入した方が安くなる訳です。年間20棟程しかやらない会社と、1万棟やる会社は掛け率が当然違う。と考えるとやっぱり大手さんが設備重視になるのもわかります。一方、工務店さんが設備重視でやると、もう掛け率で絶対勝てません。
小暮:
高いですもんね。
松尾先生:
はい。工務店の経営戦略としても、そのやり方はやっぱり負け戦です。
小暮:
そうですね。また、設備器具って、キッチンにしても洗面台にしても、長くもたないですもんね。
松尾先生:
そうですね、僕はよくいうんですが、別にキッチンを滅茶苦茶良いのにしなくても良いんじゃないですか。逆に構造や断熱性みたいに、生涯変えられない所はちゃんとやりましょうよって。勿論お金に余裕がある人はキッチンも良いのを使って貰ったら全然構わないんですけれども。どんな最高級のキッチンを使ったって、10年経って見に行けば、古くなった感じが出ます。
小暮:
ですよね。くすみますしね。
松尾先生:
それにもう最新型の商品に比べたら明らかに古い感じがするのは、否めない。その点、現場製作で作った様な家具は、経年しても流行り廃りの感じは少ないんですけどね。メーカー品はやっぱり明確に古さ感が出てくるので。
小暮:
そこはそうなんですよね。決して高い金かけちゃいけない訳じゃ無いけど。順番がちょっと違うかなって、私も感じますね。
対談第一弾
Vol.1 日本の住宅基準はかなり遅れている
Vol.2 夏は入れない、冬は入れる
Vol.3 出木杉くんが嫌われる
Vol.4 日本の家は「裸にカイロ」
Vol.5 絶対に確認すべき3つの数値
Vol.6 安易な工法やシステムに騙されてはいけない
Vol.7 共働き夫婦の時短を考える
Vol.8 努力しない「ラーメン屋」は淘汰される