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 | 2024.09.10

①高性能アルミ樹脂複合サッシを使う理由②アルミクラッド窓の金額にビックリ③可変気密シートの幻想④棟換気が機能する条件

今回は質問コーナーです。

まずは1つ目です。今回は、当社のホームページに掲載している松尾先生との対談動画に対してコメントをいただきました。

▼プロが語る家づくり
https://www.kosodate-sekkei.co.jp/blog_category/talk/

この対談動画を作ったのは、5〜6年前だったと思います。ちなみにこの頃は、松尾先生はまだYouTubeをやってなかったんです。私がYouTubeをやっていて、その中で「松尾先生との対談動画を作って配信するのも面白いかな」とか「当社のホームページに載せると、松尾先生が言っていることがよりメジャーになって、参考になるんじゃないですかね?」ぐらいの感じで提案したんです。

その後松尾先生の会社に、当社のホームページの動画を見た人から問い合わせが行ったそうで、松尾先生が「うちに問い合わせが来た。動画ってすごいんだね」と言って、松尾先生もYouTubeを始めました。すると一気に8万登録ぐらいになり、違う世界に行っちゃったんです。

さて、本題に入ります。対談の中でも、以下の動画に対していただきました。

▼Vol.9大手はなぜ樹脂サッシを使わないのか?
https://www.kosodate-sekkei.co.jp/blog/matsuo-2-vol9/

「大手に限らず、高気密高断熱を売りにしている会社でアルミ劇脂複合サッシを使用していると聞くと「ん?」となります。以前行った工務店では、掛脂は外側に使うと紫外線で劣化するのであえて複合にしています。うちの地域(5地域です)ではそれで十分なんです、と言われました。今の家はアルミ樹脂複合サッシ、low-Eペアガラスですが結露はほとんどしていませんので、たしかにこれでも良いのかなと思うこともあります。でも冬場に窓際に行くとやはり寒いです。横脂サッシにするとこの部分が変わってくるということなのでしょうか?」

某Pソニックホームの設計士の方が「樹脂サッシはポリバケツと同じです。ポリバケツって外に置いておくと、色が変わってバリバリになっちゃいますよね」と言ったのを、私の動画を見てる方が聞いたそうで「こいつは何を言ってるんだと思いました」とコメントをいただいたことがあります。確か3年前ぐらいのことです。今はさすがに、これだけ世の中の情報が広まってるから言ってないと思います。

結露というのは、アルミサッシだから・樹脂サッシだからという理由だけで発生するものではないです。結露は、窓の性能で決まる部分もあるんだけど、窓の性能だけでは決まらない部分もあります。室内の水分量・対流など、いろんな部分が関係します。アルミ樹脂サッシでも全然結露しないという家もあります。ただこの方も言っているように、寒いのはどうしても仕方ないです。

アルミサッシが樹脂に比べてどうしても劣る点は、熱伝導率と気密の取りにくさです。最近の高性能アルミ樹脂複合サッシというものは随分気密が取りやすくなっているらしいけど、そこで問題になるのが値段です。高性能アルミ樹脂複合サッシなのに、樹脂サッシより高いんです。それでも、窓枠は薄くなるし、性能も少し落ちて高くなっちゃうけど、フレームが美しいから使うという設計士の方・住宅会社の方も、実際いらっしゃいます。それはそれで、その先生の設計のポイントだから悪いとは言えません。

最近YKKさんが、アルミクラッドというものを出しました。木製サッシの木の枠の所にさらにアルミを巻いて、性能を高めながら耐久性も高めたものです。理論としては一番いいんじゃないかと思います。木製サッシは性能はいいんだけど、木の枠の部分がどうしても劣化しちゃうので、定期的に塗る必要があるんです。そうしないと、場合によっては腐るとか、シミになるとか、曲がってしまうこともあります。そのメンテナンスコストも馬鹿になりません。それを防ぐために、上からアルミの枠でカバーします。そうすれば、中の木が直接雨風に当たるわけじゃないから保存される感じです。

ただ、このサッシが恐ろしく高いんです。掃き出し窓1個の仕入れ価格は、樹脂窓の3〜4倍ぐらいはすると思います。そこまでお金を掛けて使うかどうかは、建てられる方の選択肢・好みだと思います。お金があれば「必要ではないけど付けてみたい」というのも、人間はありますよね。

同様に、トリプルガラスでも日射取得がよくなったサッシも、先日出ました。トリプルガラスの欠点は、ガラスが増えるためにどうしても日射取得が減ってしまい、冬に寒くなることです。その欠点を克服したものを、YKKさんが出しました。熱が出にくいけど日は入りやすいんだから、考え方としてはものすごく素晴らしいと思います。

ただ問題点は、価格が高いことと、トリプルだから重くなることです。仮に年配の方で春・秋は窓を開けたいという人や、お子さんがいて窓を開けて遊ぶ時は、億劫になると思います。さらに、大きな窓で重いので、土台というか下枠にかかる負担は大きくなります。そうするとその負担を考えて、サッシが乗る下枠の補強などはやっておかないといけません。1階なら土台のすぐ下にコンクリートの基礎があるからいいけど、仮に2階の胴差しなどに乗せる場合はすごく負担が掛かります。ちゃんとやっておかないと、10年くらいの単位でずれる可能性もあるかもしれません。そういうことをやるなら、職人さんもある程度腕・感覚がある方で、ちゃんとした施工が伴うところで、危険性も担保しながらやっていかないと、怖いと思います。家は性能だけではありません。

次のコメントです。以下の動画に対していただきました。

▼①可変透湿気密シートは過大評価されている②工事中の現場に行くべき理由③私がオンラインで打ち合わせをしない理由④気密が高いのにコンセントから隙間風が入ってくる
https://www.kosodate-sekkei.co.jp/blog/sheet_kadai_hyouka/

「可変透湿シートは相対湿度によって透湿性が変わるようですが、冬、加湿器で室内が高湿になった場合は壁のなかに湿気が入っていきそうなのですが、その様なことは起こりえますでしょうか。」

気密シートは、基本的に湿気が入らないようにするので、入りにくく出にくい感じです。それが可変になると、入りにくいんだけど、仮に中で湿気が溜まった場合は出るようになります。これは夏型結露対策で使ったりします。

絵で説明します。これがもしわからない方は、私の別の動画で壁の構成を説明している動画があるので、それを見てください。まず、壁の室内側に気密シートを貼り、外側には通気層を取ります。防湿気密シートがあると、内側から湿気が来た時にバリアになるから、壁に入りにくくなります。ただ、仮に壁の中に湿気が入った場合は、外側の通気層に抜けるというのが、一般的な防湿気密シートの考え方です。

これは冬に有効なんです。なぜかというと、湿気は温かい所から冷たい所に移る性質があるからです。冬は室内の方が暖かく、外は冷たいので、湿気は室内側(温かい方)から外側(冷たい方)に行こうとします。もっと言うと、内側と外側の圧力差により、湿気が壁に入った時には外側が開放なので、外側に引っ張られるというものあります。これが防湿気密シートの考え方です。

ただこれの欠点は、逆になった場合です。夏には、外側が暖かく、室内が冷たくなります。そして、梅雨時期など湿気が多い時期や、雨が降った後、地域によっては海岸沿いなどの湿気が多い所だと、外の湿気の方が多くなります。その上で、室内側をエアコンで冷やすと、外側は暖かく湿った空気、内側は乾燥した冷たい部屋という状態になります。

ここで、通気層の内側には透湿防水シートを貼っていますが、主の役割は防水シートなので、湿気は内から外も、外から内も、通すんです。だから、外側の温まった空気が、壁の中に入ってきます。その時、内側に貼っていた防湿気密シートがあるとそこで空気は止まり、ここで温度差が生じて結露します。これが夏型結露です。

それを防止するために、室内から入った時は閉じるけど、外側から来た時は抜けるみたいな、すごい機能を持ったシートがあるんです。しかしそのシートは、湿気がちょっと入っただけで通すようなものではなく、壁の中がかなり多湿にならないと湿気は出しません。

私も屋根断熱の際にはこのシートを使っています。夏の屋根の、ガルバリウム鋼板の表面温度は80℃ぐらいになります。80℃の鉄板の下に断熱材があって、その下を屋根裏エアコンで冷房している状態です。先ほどと同じように熱が気密シートでブロックされると困るから、私は可変気密シートを使っています。

でも今の所、可変気密シートを触った時にそこに湿度がすごく出てるとか、ピタッとなっているなどはありません。その理由の1つに、通気がうまく効いていることがあります。可変気密シートは保険で、それが主ではないと思います。主としては、外壁から通気して屋根まで登って通気をしやすくする、それがちゃんと機能するようなルートの確保の方が大事です。

他の動画で話した、屋根屋さんが「棟換気はあまり意味がない」と言っていたという話も同じで、棟換気がちゃんと機能するような空気の流れを作ることが大事です。もっと言うと、そもそも棟換気はどうやって作動するかということです。棟の頭に換気をつけるだけでスースー抜けるなんてことはありません。

もっと言うと、そもそも国は軒先の通気については、確認申請で規定はしていません。確認申請では「軒の面積に対して何分の1以上の穴を開けて、棟換気をつけろ」みたいな基準はないんです。でも、旧住宅金融公庫、フラット35の規定では、確かこの規定があります。

ただ、この規定でやっても、実際には棟換気は効いてないんです。屋根換気を作ってるメーカーさんにも聞いたし、その実験も見せてもらったけど、あれじゃ通気しません。なぜかというと、そもそも「どうやったら通気するか」という視点が抜けているからです。なんとなく「ここに穴を開ければ満遍なく空気が流れる」という幻想がある感じだと思います。でも実際に実験すると、そんなことにはなりません。なぜかというと、この換気は温度差を使った換気だからです。

暖かい空気は上に上がりますが、それを応用したのが棟換気です。だから軒に穴を開けても、屋根裏が全体的に暖かいと、暖かい熱がそこに留まってるので、上に抜けることはありません。この原則がわかっていれば「穴を開ければ抜けるだろう」とはならないと思います。でも意外に、なぜ抜けるのかという根本的な理屈をわかっている屋根屋さんはいません。私もかなり偉そうに言っていますが、私もいろんな方や先輩に教えてもらったから今言っています。

「◯◯をつければOK」ということもありません。これは家づくりでも全く同じで、「この断熱材を使えばいい」「この断熱材は最強」「これ使えば健康になる」なんてことは全くありません。そういういろんな理屈を理解しないと難しいと思うけど、それを消費者の方が全て勉強するのもなかなか難しいとも思います。