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 | 2024.04.15

①1級建築士は必ず構造計算をしているのか?②耐震等級2でも良い理由は何か③耐震で儲ける人がいる?④読解力が無い方が好きなYouTube⑤無垢材VS集成材

今回は質問コーナーです。メルマガに対する感想をご紹介します。

時々、会社宛てに直接メールをいただくこともありますが、基本的に施工エリア外の方からのお問い合わせにはお答えしていません。その理由は、施工エリア外の方からの質問に答えても、かえって混乱させる要因になることもあるし、前提条件がわからないからです。お答えしたいけどちょっとこれは難しいなと思うものは、YouTubeで取り上げて、私なりの考え方・思うところをお話しさせていただくこともあります。その辺りはご理解いただければと思います。

まずは以下のコメントです。

「耐震等級3を建築家に希望したら「不安を煽って騒いでる人達がいるけど、申請するために50万円位かかるし、日数もかかる、耐震で儲けようとしてる業界の闇です」と言われ、却って不安になりました。耐震を軽くみてる気がします。申請しなくても構造計算してほしいです。というか1級建築士は、必ず構造計算するものと思ってました。建築申請が想像以上に緩いことに驚いてます。小暮さんの意見が知りたいです。」

建築家の方は、ちょっと違う方向性があると思います。以前に見ない方がいい建築系YouTubeの話をしましたが、その人も建築家みたいな感じですよね。ある人から「このYouTubeってどうなんですかね?」と言われて見てみたら、「たしかにこれは見ない方がいいかな」と感じるものでした。どんな人なのかと思って調べたら、九州かどこかの一級建築士で、デザイナーズ系の家を作っている方のようでした。その方が言っていることは合っていると思うところもありましたが、これは全然違うんじゃないかと思うところもありました。

耐震等級なんて気にしないという人は、建築家だけじゃなくて工務店の方でも一定数います。よくあるのは「国は耐震等級1でいいと言っているのに、何でそれ以上にする必要があるんですか?」という感覚の人や「耐震等級2で十分ですよ」と言う方もいます。長期優良住宅は耐震等級2でもOKなので、だから「耐震等級2でもいい」と言っているのかと推測しています。

国が「耐震等級1でいい」と言う、長期優良住宅が「耐震等級2以上でいい」と言うのには、前提条件があります。さらには「耐震等級3の方がいいんじゃないか」と言う人もいます。私も耐震等級3の方がいいと思うし、構造の専門家の佐藤先生も「耐震等級3じゃなきゃいけない」と言っています。こう差が出るのは、前提条件が違うからです。

みなさんもご存知かと思いますが、耐震等級1というのはあくまでも倒壊しても仕方がないという基準で、逃げられる時間を稼ぎましょうというのが定説です。すごく大きな地震が来た時には住み続けられない前提なのが、耐震等級1です。一方で耐震等級3は、熊本地震の教訓を踏まえた上で、あれだけの地震が来ても補修しながら住めるレベルで家を維持できるという基準で家づくりを考えるものです。

俺は金があるからぶっ壊れたらまた建てればいい、という人は、耐震等級1でいいかもしれません。あとこれは皮肉っぽいですが、地震保険をたっぷり貰うのなら耐震等級1でもいいかもしれません。いろんな考え方があるのでなかなか難しいです。

ただ、耐震等級3を申請するのに50万円はかからないと思います。許容応力度計算をしても50万円もしません。もしかしたらこの建築家が言っている「耐震で儲けようとしている人」というのは、◯◯ダンパーとかのことかもしれません。

私はあまりダンパーは好きじゃないです。あくまでもダンパーというのは、一般的なものをあれこれと対策して、さらにお金をかけてもいいから安心したいならダンパーもある、という話のもので、間取り計画・ちゃんとした耐震設計があった上の話です。建物の骨組みがちゃんとしていて構造計算的によかったとしても、通気・湿気処理とか、壁体内結露を起こさない・構造物を劣化させないような施工方法がないと、維持はできません。これは熊本地震の教訓です。ダンパーをつければ湿気が飛ぶわけではありません。

ダンパーをつければ構造計算上硬くなって地震被害を逃す、という理論はわかるんだけど、その前に間取りをちゃんとするとか、構造計算をするとか、気密処理をするとか、壁体内結露を起こさないようにするということがあります。それがちゃんとできた上で、さらにダンパーもいかがですか?という話だと私は思っています。この順番じゃないと「耐震で儲ける人の闇」と言われても仕方がない感じはします。

個人的な意見としては、日本という国で考えるのであれば、耐震等級3にしておいた方がいいと思います。でもこういう方は住宅会社の方にも一定数います。気密はいらないとか、断熱材で調湿させるとか、無垢はよくて集成材はダメとか、風通しのいい家を作ることで住み心地がよくなる、などと言う人もいます。そういう地域もあるけどそうじゃない地域もあるから、なかなか難しいです。

それをちゃんと読み解くことが、前に言った読解力です。残念ながら今のYouTubeは、集客目的になっているものが多いと思います。そうは言っても私も、私みたいなことを言っている人が好きとか、私に家づくりをお任せしたいという人を探しているから、これも集客です。ただそうではなく、びっくらこんなことを言って集客をする人も、今のYouTubeにはすごく多いと思います。実はこの人はよくわかっていないんじゃないかなと思う人もいるし、ペットが出てくるとか、いかにもYouTuberみたいな作り方の人もいます。

ああいうのは悪いわけじゃないんだけど、テレビ番組みたいな感じがします。YouTubeがどんどんエンターテイメント化してきた感じがします。

私はYouTubeを始めてもう5〜6年経ちます。私が始めた頃は、姫路のクオホームさんがYouTubeをやっていて、それを見て「こういうもので消費者の方に自分の考え方を伝える方法もあるんだ」と思いました。面白いなと思ったし、私は元々喋るのが好きだからYouTubeをやってみました。それから月日が経って、YouTubeが一般化されてきて、YouTuberが生まれて、建築系YouTuberも出てきた感じです。

今は「床下エアコン」などで検索すると、すごい量の動画が出てきます。中には「床下エアコンで冷房」という動画もありますが、なかなか難しいとも思います。冷房をしてもいい地域もあるけど、一般的にはしない方がいいと思います。

そういうものも全て含めて、読解力は必要だと思います。読解力というのは、自分勝手に考えないことだと私は思います。何でこの人はこんなことを言っているのか、どういう前提条件で言っているのか、この人が建てている家はどういう家・地域なのか。それを読み解く力が読解力です。

読解力については、ネットで「読解力をどう養うか」という記事が出てきました。その記事の先生が言うには、現代の人は拾い読みをしたり見出ししか読まなかったりする人が多いそうです。自分の都合のいいところだけを読んだり、見出しだけを頭の中に入れて判断してしまうということです。YouTubeでも、過激なタイトルの方がウケたりしますよね。その見出しが頭の中に入ると、自分勝手に前提条件を組み立ててしまいます。そういうことで、読解力のトラブルが起こるとそうです。

また国語の問題で、本文を読んで設問に答えるものなのに、回答に自分の意見を書くようなケースがあるそうです。これも読解力の問題です。「多分こういう質問をしているんだろう」と、自分で勝手に作っていっちゃうんでしょうね。

記事には「今の教育では昔と比べて個性が尊重されており、自分の意見を述べられることはよいことですが、本文を読めておらず的外れな回答をしているのなら問題です」と書かれています。自分の意見を言うのはいいんだけど、それは前提条件があった上での自分の意見でなければいけないのに、前提条件を無視した意見を言って、それが個性の尊重ということになっているということだと思います。それが許されているのはおかしいと思います。

海外でも、例えばアメリカでは個人の意見がものすごく重要視されているけど、「そんなこと誰も聞いてないじゃん」ということを言っても相手にされないと思います。日本はそれがちょっといびつな感じがします。個人主義もいいし、個性もいいし、自分の意見を述べるのもいいけど、「今討論していることはこういうこと」という前提条件の中での討論でなければ、話は全く繋がりません。

他にも記事には「広告のキャッチコピーや宣伝文句・動画などを見た時に、それを作成した側がどのような意図で人を動かそうとしているかを考えるのは、トレーニングだ」と書かれていました。これはYouTubeの動画でもそうだと思います。そのキャッチコピーをつける方は、どんなことを意図して、何をお客さんに伝えようとしているのか。それが場合によっては、その人の商売のための操作・誘導になっているケースもあります。

私も動画のタイトルをつける時には、言いたいことやここは大事なんだと感じているところを伝えようと思ってつけています。しかしそういうタイトルのつけ方は、あまり面白くないと思います。「◯◯10選」「これはアウト」「◯◯はダメ」「絶対に失敗するパターン」など、そういう方がウケることもあります。それがいいか悪いかはわからないけど、読解力は今のYouTubeに必要だと思います。

次のコメントです。

「集成材と無垢材の件は、工務店によって言うことが正反対な事もあるので気になっていました。地元の無垢材派の工務店の主張は、住宅に気密は要らない。無垢の柱と羊毛断熱材が呼吸をする。集成材の方が最初は強度があるが、無垢材は建ててから乾燥していくから強度が増していく。10年で強度は逆転する。パッシブデザインと蓄熱暖房機で冬も暖かい。でした。(メルマガの業者さんと似ていますね。)集成材派の工務店は、特に梁は集成材の方がたわみもなく強いので、集成材の方が値段は高いけど採用していますよ。という感じでした。」

私は集成材も無垢材も使います。無垢材がよくて集成材が悪いということも、集成材がよくて無垢材が悪いということも、どちらもないと思います。使う場所によっては無垢材の方がいいこともあるし、何でそこまでして無垢材を使わなくちゃいけないの?ということもあります。

ただ「無垢の柱と羊毛断熱材が呼吸をする」というのはよくわかりません。湿気を含んだものが場合によっては揮発するということかと思いますが、それを「呼吸」と言うとよくわからなくなります。集成材も水分を含んだら放出します。集成材の柱が水分を含んだ時に放出するのと、無垢の柱が水分を含んだ時に放出するのとで、何が違うのか私にはわかりません。

いいものはいいし、悪いものは悪い。無垢材にも集成材にもいいところがある。集成材にも無垢材にもダメなところはある。そういう中で「俺はこれがいいと思ってやっている」というのは、その人の考え方だからいいと思います。それを「これがよくてこれはダメ」とするのはどうかと思います。その「ダメ」という理屈も、客観的なデータがあればいいけど、そのデータはどこのものなのか・どういうものなのかがわかっていないと、全く違う方向に行ってしまうと思います。

この辺りのことをあまり言うと反応が来そうで怖いのでやめておきます。