今回は「地震保険に入った方がいいのか?」という質問です。地震保険というのは知ってますよね? 地震で家が倒壊した時にお金が下りるという保険です。
その名の通りなんですけど、加入する方というのはそんなに多くないと思うんです。ただ、これも場所によるので、富士山の辺りとかは高い確率で地震が起こると言われてますので、日本海側じゃなくて太平洋側の方だったら地震保険に加入する方は多いのかもしれない。
群馬・埼玉・栃木の一部が施工エリアなんですが、うちのお客さんで地震保険に入っている人もいらっしゃいます。でも年に1人もいないんじゃないかな、2年に1人ぐらいは入ってるかなという感じです。あくまでもどの保険に入るかはお客さんの自由なので、強制的に勧めることはあり得ないです。火災保険は基本的には入らないと住宅ローンに入れないですし、住宅ローンに入らなくても火災保険にはみなさん入ってると思うんですが、地震保険については2年に1人ぐらいじゃないかなと思います。
その理由は何なのかなというと、まず家の耐震性能が上がってるということがあります。当社の場合は、許容応力度計算で耐震等級3の家しか作っていません。地盤の状況にもよりますが、震度7の地震でもなかなか倒壊しないという前提で設計しているので、そうなると地震保険の適用条件にはちょっと厳しくなっちゃうんです。
私は保険に関してそんなに詳しくないんですが、ここに地震補償の保険の紙があります。保険屋さんに聞いたところ、保証期間が10年間で保証率が100%でお客様による掛け金の負担なしという条件みたいです。この地震保険のシステムを一番最初に住宅業界の中でやったのがパナソニックホームズさんだったかな。別にその会社が悪いわけではないですが、そこから広まっていった気がします。
今はいろいろあるけど、例えば住宅の新築費用が約2500万円かかって、地震で被災した時に被災者生活再建支援金や政府の義援金を公共・共助で受けられる金額が400万円ぐらいだったとすると、2100万円の不足が起こってしまう。さらに家財や引っ越しの費用もかかりますよね。でもこの2100万円は保険に入れば賄うことができる。なおかつ、地震保険に入る時にこの今回の保険であれば、耐震等級3の住宅の証明がないと入れない。耐震等級3の証明というのは性能評価証明のことです。
うちもここ最近は性能評価をほとんどやっていますが、当社が構造計算して耐震等級3になりましたという書類ではダメなんです。そうじゃなくて、性能評価証明のように国が定める機関にデータを出したら向こうが間違いなく耐震等級3になってますという紙みたいなものをくれるので、それを保険屋さんに見せれば公の書類になります。そうすると地震保険に加入できる。それがなくても加入できる保険もあるとは思うけど、割引が効いたりもします。
今回のはそれがないと入れない保険。なくても入れる保険もありますが、掛け金が高かったりするので、どうせ地震保険に入るんだったら耐震等級3の証明を貰った方がいいかなという風に思います。今回のは地震に強い家でも入れるとか、その他にもいろいろ書いてあるんですけど、保証期間が10年間で保証率が100%とバーンと言っちゃってて、その金額は全部出しますと言っています。しかもお客さんによる負担があるわけじゃないから、いいかなという感じもするわけなんだけど、保険の内容を見てると最初に書いてあったこととちょっと違うかなと思うところもあります。
ここが大事なんです。保険の内容を理解した上で加入するのが当然ですが、中には住宅会社さんの勧めで入って、保証率が100%とか保証期間が10年間ですとか、お客さんの掛け金がどうとか表面的なところだけ言われて、実際の保証内容まではわからなかったとか、サインはしてるけどそこまで読んでなかったというケースは意外に多いと思うんです。
震度が6.8以下の地震の場合は適用されます。東日本大震災の時は最大計測震度が6.6で、熊本地震が6.7だったので、熊本地震や東日本大震災規模までの地震で倒壊した場合には適用になります。しかし、国がもし震度6.9と公に発表したらこの保険は適用にならないというところがちょっと怖いかな。
一般的には保険というのはとんでもないことが起こった時のために入るという感じじゃないですか。今までに起こった地震よりももっと上の震度7や7.5ぐらいの時のために、耐震等級3の家を作って、震度7でも倒壊しない基準にしたのに、震度7以上の地震が来ちゃって、せっかく耐震等級3の家を作ったのに壊れちゃうというような不慮の事故に備えるためという感じがするけど、実際はそうではないということがあります。
もう一つ怖いのが、総保証限度額が低いということです。総保証限度額が10億円、意味はわかりますか? ドンと地震が起こって100軒の家が被災した。震度6.8以下だったからみんな保証の対象になった。100軒で1000万円ずつかかったら10億円、2100万円ずつだったら40軒分ぐらいしかないんです。それを超えちゃった場合はみんなで分割するから、2100万円も出るわけじゃない。
1年間で10億円なので、2024年の4月に地震が起こったとして10億円使い切っちゃったら、その後6月・7月に他の場所で起こってもお金は出ないことになります。そういう内容になっています。そうは言っても、こういう場合は保証するという感じにはなってますけど、意外に保証金額が少ないというところがかなり怖いかなということと、耐震等級3の耐震性能の高い家を作ったとしても、壊れた時は全く保証されない。これをどう考えるかでしょうね。
ちなみに最初に話したパナホームさんなんかだと、たしか5000万円まで保証みたいなことが書いてあったけど、2軒で1億、1年間で5000万円の損害があったら総保証限度額は20軒で10億円になる。パナホームさんもそんなことはしないと思うんです。ちょっと嫌味みたいな話になったけど、過大アピールしてるなという感じはします。もしかしたら足らない分はパナホームさんが自腹を切って保証してくれるのかもしれない。
パナホームさんみたいな大きい会社だったら5000万円までは保証してくれるはずだから、その年の状況で1000万円しか下りなかったとしても、残りの4000万円はパナホームさんが保証すると言ったんだから自腹を切って保証しますということなら、それはそれでありだよね。ただ中小工務店なんかがそういうのを真似しちゃったら、自腹を切るのは絶対に無理なので、保険というのはいろいろよく見ていかないと怖いかなという感じはします。絶対に入っちゃいけないわけじゃないけど、そういうことも参考にしていただければという風に思います。