Facebook
X
YouTube
ホーム > ブログ > YouTube > 地盤保険が降りないケース
YouTube
 | 2024.10.10

地盤保険が降りないケース

今回は、地盤保険が下りないケースについて解説します。地盤調査を行うタイミングによっては、全く違う結果が出るということです。

そもそも地盤調査とは、家を建てる時に家の重さを地盤が支えられるかどうか、地耐力があるかどうかということを調べるために行うものです。調査方法としては、スウェーデン式サウンディング、超音波、重りを載せる方法などがあります。

地盤調査を絶対にやらなくちゃいけなくなったのは、わりと最近です。昭和の頃にはやっていませんでした。私が前の会社を辞めて、今の会社を作ったのは23〜24年前ぐらいですが、その頃にはメジャーになっていました。当時は小さい店舗はやらなかったけど、住宅に関しては保証をつける必要もあり、今も全棟でやっています。大手ハウスメーカーさんの一部では既にやっていたと思いますが、地元の工務店さんだと、やっていない会社も多かったはずです。

群馬県太田市のすぐ隣に、大泉町という地盤の悪い地域があります。特に朝日というところは、田んぼが多くて水が溜まりやすく、スーパーは大雨が降ると陥没することで有名です。その周りには住宅もありますが、見ただけで地盤が悪い感じがします。案の定、地盤補強工事をすることになるんですが、今でも覚えている出来事があります。

私が工事の立ち会いをしていたら、近所らしき人が犬の散歩をしながら「何をやってるんですか?」と聞いてきたので、「地盤補強工事です。ここの地域は地盤が弱いので、杭をいっぱい作って、その上に家をポンと載せれば、仮に泥が下がっても家自体は下がらずに済みます。」と言ったら、「俺の家はそんなことはやっていない。」と言うわけです。「何年前の家かわからないけど、昔はなかったですからね。」と言ったら、「そんなに古い家じゃないんだよな。あれなんだよ。」と言われ、見てみると、まだ築6年ぐらいの新しい家でした。それぐらいなら地盤補強工事はやっているんじゃないかと思いましたが、やっていないそうです。「別に何ともないんですよね?」と聞いてみたら、「外壁の角にひびが入っている。」とのことでした。

真四角の家で真ん中に重心があるならいいですが、家はどうしても弱い方向に傾くため、形によっては重心が傾いてしまいます。そのご主人の家は重心が傾いてしまい、ひびが入ってるんだと思いました。「それは沈んでいるんですよ?」と言うのも失礼なので、「もしかしたら外壁の留め方の問題かもしれません。」という話をしました。

地盤保証は、今では20年がメジャーですが、当時は10年保証がほとんどでした。地盤調査をしていないという段階でどうなのかなとは思ったけど、「大体は10年保証がついてるから、住宅会社さんに連絡した方がいいですよ。」と言ったところ、その会社は去年潰れてしまったとのことで、思わず黙ってしまいました。遠目に見たら傾いているかどうかはわからないけど、ご本人が「外壁の角の方にひびが入っている。」と言っていたので、やっぱり地盤調査はものすごく大事だと思いました。

地盤調査をするタイミングはすごく重要です。基本的に地盤調査をするのは、この土地の上に家を建てると決まった時です。地盤の柔らかさや硬さにばらつきがないかどうかなどを調査します。例えば、この土地は浸水地域だから高さを出したいという要望があったとします。基本的には盛り土の量は5〜10cmだったらいいんだけど、30〜50cmぐらいがいいとのことなら、その状態を作った上で調査をしなければ、本当のことは絶対にわかりません。盛ったばかりの新しい土は、柔らかいから沈下しやすいですよね。砕石みたいな硬いもので盛れば沈下しにくいですが、お金がかかります。残土という、公共工事で掘削して出た泥があり、土木屋さんに行くと無料で貰えるので、こういうもので盛ることも多いです。

盛り土をするのであれば、その後に地盤調査をしないと本当の状況はわかりません。基本的には盛り土をした後に地盤調査をするのがルールであり、それが本来の結果になるので、それをもって保険に入るという流れになります。盛り土をして、地盤調査をして、解析をするわけです。それで仮に地盤が悪かったとしたらすごくお金がかかるので、予算がカツカツな人であれば困ってしまいます。そうなると、盛り土をしていない段階で地盤調査をして、地盤がいいという前提にして保険に入らせ、さっさと盛り土を着工してしまうという業者さんも出てきます。盛った土が原因で家が傾いた場合に保険が下りるのかというと、調査した時と建てた時の条件が違うので、おそらく下りないと思います。悪意があるのかはわかりませんが、そもそも盛り土をするということは、盛る土にもよりますが、自沈してしまう可能性もあります。住宅屋さんの中には、そういう知識がない人もいると思います。

工務店の中でも、建築事務所を持っていて、自社で設計をして、現場監督もいるという会社は、比較的こういうことはわかると思います。ただ、建築免許は持っているけど設計や打ち合わせは外注するという人もいるし、建築免許も現場経験もないけど打ち合わせはできちゃうという人もいます。簡単に間取りを手書きして、外注の設計者さんに投げて、確認申請を取って、それとは別に地盤調査はこういう風にやっていくというスタイルは、決して悪いわけではありません。地盤調査をして保険に入るという仕組みはわかっても、そもそも地盤調査とはどういうものなのか、どういう家が傾くのかなど、理屈がわからないまま何となく家づくりをしている会社さんだと、そういうことを知らない方も多いのかなという感じがします。

お客さんは、間取りや仕上げ、収納やキッチンがどうだというところにはすごく興味を持つけど、地盤調査のタイミングがどうだというところにあまり興味はないと思います。そういう細かいところに関しては、「お宅はプロなんだから全部やってください。」という話になるはずです。

傾いた家を直す工事をする、曳屋さんという人がいます。元々は古い家を違う土地に引く仕事をする人ですが、今はそういうことはなかなかないので、地盤沈下対策をしたり、傾いた家を元に戻したりする仕事が大半です。私のFacebook友だちに曳屋さんがいて、その方のセミナーに参加し、工事事例を聞かせてもらったら、沈下した家の怖さや、沈下したものを直す大変さがよくわかりました。直すのは本当に難しいし、そもそも理屈がわかっていない業者さんがすごく多いそうです。また、ネットで検索すると、「一度沈下したものは再沈下しない。」という風に出てきますが、そんなことはないそうです。こういう工法でお金をかければ沈下しにくいというのはあるけど、絶対にしないとは言えないとのことです。

こういうことも含めて、地盤調査はきちんとやらないと本当に怖いと思います。この怖さを知らないという人は、住宅会社さんの中にも多いんじゃないかと個人的に感じるところもあります。消費者の方が細かいところまで気にするのは本当に大変だし、ずっと疑っていると嫌になっちゃうから、そういうこともあるんだなと知ってもらったり、機会があれば聞いてもらってもいいと思います。

UA値やC値、日射取得や日射遮蔽も大事ですが、それについてさらに追求して勉強をするのはもういいんじゃない?という感じの人も最近は多いです。勉強してもキリがないから、プロに任せた方がいいと思うところもあります。みなさんもこういうことを頭に置いておいていただければと思います。