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 | 2024.08.30

①搬入されたEWに問題があった②棟換気は意味が無いと屋根屋さんが言っていた③再生数・コメントが多い動画は正しいか

今回は質問コーナーです。

今回、とある方から「ん?」と思うようなご質問をいただきました。質問者さんに対して思ったわけではなく、いろんな部分で「こういうことは多いんだよな」と感じたため、ご紹介します。先に断っておきますが、今回の話に対しては、実際に現場で工事をしている職人さんからクレームのコメントが来るかもしれません。ただ、あくまでも私は事実として現場で感じることを言っているだけですし、こういうことが起きるのも仕方のないことだと思っています。

「餅は餅屋」という言葉があるように、例えば大工さんに基礎の地中梁の組み方を聞いても仕方がないし、設備屋さんに付加断熱の方法を聞いても仕方がないですよね。設備屋さんがかじった知識で「断熱欠損はダメなんです」と言ったとしても、断熱欠損をしないための施工方法やポイントというのを知っているかどうかはまた別の話です。ただ、それを聞いた消費者の方は「この人は職人さんだから、家づくりについて詳しいんじゃないか」と思うのは当たり前だと思います。

例えば、レストランに入ると店員さんがメニューを持って席まで来ます。その後、黒板を持ってきて「本日のオススメがあるんですけど、いかがでしょうか?」と言って、黒板に手書きで書いたメニューを持ってきてくれることがありますよね。そして「本日のオススメはスズキの◯◯です」などと教えてくれるので、美味しそうだなと思って「どんな感じなんですか?」と聞くと、「ちょっと待ってください」と言って、マスターに聞きに行ってしまうということがあります。その店員さんは自信たっぷりに言ったのに、詳しいことは知らなかったということは普通にあります。かといって、その店員さんが悪いというわけではありません。

住宅の現場でもこういうことが普通に起こっています。その1つが別の動画で解説した「大工さんがセルロースファイバーを高性能だと思っている」という話と同じです。実際に断熱性能を計算している実務者の方もたくさんいますが、現場監督の中には、現場管理をしているだけで断熱性能まではわかっていない人もいます。設計士についても、図のトレースをしているだけで構造計算まで自分でやっているという人はあまりいません。セルロースファイバーを高性能だと思っている大工さんがいたとしても、実際にUA値計算をしていれば、そんなにすごい数字にはならないということはわかるはずですよね。

では本題に入ります。以下の動画に対してのコメントです。

▼ガルバリウムの屋根は瓦屋根よりも熱い?

ガルバリウムの屋根は瓦屋根よりも熱い?

「現在厚型スレートの屋根材が葺かれているのですが、経年劣化等もあり、数年以内にスーパーガルテクトに葺き替えたいと考えています。20年前の家で屋根自体は二重屋根になっているのですが、当時の断熱材の性能と通気量が足りないのか、小屋裏部屋はエアコンをつけないと30度強まで上がってしまいます。2階の部屋も同様に暑くなります。その上、夜になっても屋根材が蓄熱した熱を放出しているようでなかなか冷めません。

本当に通気できているのか基礎上の水切りと外壁の隙間に線香の煙を当ててみましたが、吸い込んでいる様子は確認できませんでした。そこで、棟換気を含めていろいろな情報収集をしている中で、ある屋根業者さんの個人的見解として換気棟は意味がないという動画を見つけました。◯◯と●●の2本なのですが、確かな腕のある業者で雨漏りのリスクを回避した施工をすれば棟換気の効果は得られるものかご教示いただければと思いコメントさせていただきました。

他のユーチューバーさんの動画に見解を述べるのは小暮さんにとっても言いにくいことだとは承知していますが、現役の屋根業者さんがそのように考えているのは一般消費者としてはどうしたものか大変悩ましいところです。どうぞよろしくお願いします。」

当社は去年からLIXILのEWというサッシを使っていますが、他の方からも「EWのことをけなしていた消費者の方がいた。こういう意見もあるんだけど、この動画はどうですか?」という質問が来たことがあります。あくまでも一個人の方が言っていることだし、シチュエーションもわからないし、どんなことが起こったのかもわからないけど、EWを使ったのに気密が取れなくて困ったということが書いてあったそうです。どんな家なのかもわからないし、EWだけが悪いのかどうかもわからないので、私には良い・悪いは言えません。人によって考え方は違いますからね。

私がAPWからEWに変えた理由は、APWの大きな掃き出し窓の下枠からの漏れが、テストをしてみたらすごかったからです。過去の動画でも言いましたけど、その他にもいろいろな問題があったんです。メーカーさんの問題だけじゃなくて、その間に入っている業者さんに対する問題もありました。

率直に言うと、EWに変えたら気密性能は上がったんです。気密測定をしたら、APWの時は0.4ぐらいでしたが、EWに変えたら0.2ぐらいになりました。全く同じ施工方法で、同じ材料を使って、大工さんも全く同じことやっているのに、です。当社の場合は日射取得を意識してデザインをしていることもあり、大きい掃き出し窓をつけているので、余計に数値の結果に変化が出たのだと思います。仮に掃き出し窓をそんなに使わない会社さんで、FIX窓が多かったり、小さい窓をつけたりして日射取得をしないデザインだったら、そんなに数値は変わらないはずです。そういうことがあったというのは事実なので、私としてはEWを使ったから気密性能が取れないという経験は、今のところはないです。ただ、最近EWについて「ん?」と思うことがあったので、機会があったら動画で言おうかなと思っています。脅しではありませんが、来週LIXILさんが来て説明をしてくれるらしいので、それを聞いてみたいなと思います。

製造というのは難しいんです。設計をちゃんとしていても、現場の製造管理はちゃんとしなければいけないし、現場に持ってきた時のやり方というものもあるからです。物事に100%はないので、その辺りは意見を交わしながら、メーカーさんと一緒にいいものを作っていくことが一番大事なのかなと思います。

ご質問いただいた方は、「現役の屋根屋さんが“棟換気はあまり意味がない”と言っていることに対してどう思いますか?」と言っていますが、詳しいことはここでは言えません。機会があればメルマガで書いてみようかなと思っていますが、率直に言うと「屋根屋さんは通気に詳しい人ではない」ということです。

外壁通気工法という、基礎の下から空気を吸い込んで、最終的に棟から出るようにするための設計がまず必要なんですが、その設計をするのは屋根屋さんではありません。屋根屋さんは「棟換気をつけろ」と言われたからつけるのであって、通気のルートを考えるわけではないです。もっと言うと、大工さんがちゃんとした通気を取らなければ、屋根屋さんがいくら一生懸命やっても無駄になってしまいます。

この屋根屋さんが言ってるのは「これだけちゃんとつけてるのに通気しない。だから棟換気は意味がないんじゃないか」ということであって、通気しない理由は述べていません。棟換気が機能するためにどうだという話はしていません。でもおそらくこれを聞いた消費者の方は「屋根屋さんは通気のプロだから、それも全部含めて統合的な話をしている」と勘違いを起こすでしょう。決してこの屋根屋さんを否定しているわけではありません。ただ、こういうのは難しいんです。

今は誰でもYouTubeで気軽に配信ができてしまいます。例えば「このペンは書きづらくてダメだ」ということも、無料で配信ができます。今はこういう風に、客観的な見解ではなく個人的な見解が、住宅業界に関わらずどんどん配信されてしまっていると思います。当然、消費者の方も無料で見られてしまうので、見たものによって理解が変わってしまいます。統合的に物事が見られる理解力があれば「ここだけの話だよね」とわかりますが、そういう思考や見方ができなければ、主観的なことを言っている人たちに惑わされる危険性が高いと思います。

他の住宅会社さんが言っているとある現象や、エビデンスがどうなっているか全くわからない話を、自身の経験なのか、どこかで聞いた話なのか、何かの教えなのかわからないけど、正論のように言っている人もいます。仮にYouTube制作会社さんがアクセスが増える手伝いをしていたら、その情報がバーッと配信されることで、登録者数・再生回数が増えますよね。そして「再生回数・登録者数が多いということは、正しいことなんじゃないか」と、その情報を信じてしまう人も多いと思います。この前私がYouTubeで言った「サクラコメントが多い」ということもまた然りです。民主主義の原則で、多数の意見が正しいという風潮がありますからね。でもこれだけネットにいろいろ出てると、多数の意見の方が逆に違ったりすることも多いんじゃないかと思います。

何度も言いますが、この屋根屋さんが悪いわけではありません。でも、屋根屋さんは家の通気工法のことを言っているわけでもなく、棟換気が機能するためにはこういう風にしなきゃいけないと言っているわけでもないんです。そのことを理解するのも大事かなと思います。