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基礎

基礎の考え方

基礎とは、建物(上部構造)を地面に確実に固定し、その荷重を安定して地盤に伝えるための下部構造体です。構造的な安全性を確保するうえでの出発点であり、ここをどう設計・施工するかによって住宅の性能が決まるといっても過言ではありません。基礎の性能を考えるうえで重要なのは、まず鉄筋量です。鉄筋は基礎にかかる力を受け止め、コンクリートの割れや沈下を防ぐ役割を担います。つまり、鉄筋量は住宅の構造強度を数値として裏付ける要素であり、ここを削れば確実に耐久性に影響します。見た目にはわかりませんが、住宅の信頼性はこうした目に見えない部分にこそ表れます。耐震等級3を取得するのであれば、それに見合った基礎の設計が必要です。単に壁量を増やして耐震等級をクリアするのではなく、基礎の鉄筋配置や立ち上がりのバランス、地中梁の計画など、構造全体の整合性が求められます。基礎と上部構造は一体で機能するものであり、どちらかが弱ければ意味がありません。

ただし、近年では【ベタ基礎は布基礎より頑丈】という名前だけが独り歩きし、設計の根拠や性能の裏付けが不十分なまま採用されているケースも見受けられます。例えば、床下の管理を行うために人通口を設けるのですが、本来あるべき地中梁が不足していることで剛性が足りず、不同沈下のリスクが高まっている基礎もあります。鉄筋量やコンクリート厚も構造計算を行わず、「とりあえずこのくらい」という感覚で決められてしまえば、それは設計とは言えません。基礎は見えない分、誤魔化しが効いてしまう部分ですが、それだけに住まい手が気づいたときには手遅れになっていることも少なくありません。基礎は最も修繕が難しく、失敗の代償が大きい部分です。図面に根拠がない、現場での対応が曖昧、そうした積み重ねが、10年、20年後の住宅の寿命を縮めてしまいます。施工前の設計段階で、性能が理屈として説明できるか。ここが信頼できる基礎づくりの最低条件だと考えています。

ベタ基礎と布基礎

「ベタ基礎」と「布基礎」は、住宅の構造安全性や耐久性に関わる重要な構造形式です。ベタ基礎は建物全体の下にコンクリートを一体で打設し、荷重を面で支えるのに対し、布基礎は建物の外周部と一部の内部にのみ基礎を設ける形式で、荷重を線で受けます。地盤の状態や設計方針により選択されますが、現在の住宅においては、構造的にも温熱的にもベタ基礎が基本と考えています。ベタ基礎は、地面全体をコンクリートで覆うため、地面からの湿気を遮断しやすく、耐震性にも優れています。また、床下空間も部屋の一部と捉えることで、床下エアコンとの相性も良くなります。一方で、布基礎は施工コストが抑えられる反面、地面からの湿気の影響を受けやすく、部分的な支持となるため、不同沈下のリスクも高まります。注意すべきは、ただベタ基礎にすればよいという短絡的な発想です。例えば、ベタ基礎でも鉄筋量が不足していたり、間取りに応じた地中梁が計画されていなければ、構造的な剛性は確保できません。一見、ベタ基礎の方が優れているように見えますが、設計の意図と施工の精度が伴っていなければ、むしろ中途半端な結果になります。基礎は構造と環境の土台です。単に形式を選ぶのではなく、その構法に求められる理屈を理解し、確実に形にすることが重要です。

地中梁とは

地中梁とは、ベタ基礎の底盤下に配置される鉄筋コンクリートの梁で、基礎全体の剛性を高め、地盤にかかる力をより均等に分散させる役割を持ちます。特に耐震等級3を目指すような住宅では、地中梁の有無によって基礎の構造的安定性に大きな差が生じます。間取りの関係で壁の配置に偏りがある場合でも、地中梁が入っていれば基礎全体のねじれやゆがみを抑えることができ、不同沈下のリスクも低減できます。一方で、コストや施工の手間を理由に、地中梁を省略している現場もありますが、それでは長期的な耐久性を担保することはできません。目には見えない部分ですが、だからこそ設計段階で構造的根拠に基づいた判断が必要です。

人通口とは

人通口とは、基礎内の立ち上がり部分に設ける開口部で、床下の点検やメンテナンスを行うための経路としてだけでなく、空気や熱を循環させる役割も果たします。特に床下エアコンを採用する住宅では、人通口の位置や大きさが空気の流れを左右し、室内の温熱環境に直結します。間取りの都合で人通口を安易に小さくしたり、設ける位置を誤ったりすると、空気が滞留して暖まりにくい空間ができてしまい、本来の性能を引き出せません。また、人通口が小さいと将来的な点検・補修の作業性も損なわれます。構造計画と温熱計画を同時に成立させるためには、人通口の配置もまた、理屈に基づいた設計が必要です。

基礎断熱とは

基礎断熱とは、床下空間を断熱ラインに取り込み、室内と連続した温熱環境をつくる断熱手法です。特に床下エアコンとの相性が良く、機器の効率を高めながら快適な住環境を実現できます。ただし、基礎断熱で最も重要なのは、断熱材の種類や厚みだけでなく、断熱ラインが論理的に連続しているかどうかです。よくある失敗として、断熱材が立ち上がりの途中で途切れていたり、人通口や配管まわりの処理が甘く、そこから冷気や湿気が侵入してしまうケースがあります。その結果、床下エアコンの暖気が空間全体に回らず、室温のムラや結露を引き起こす原因になります。図面上は断熱されているように見えても、熱の“逃げ道”が一つでもあれば、性能は簡単に破綻します。基礎断熱は、単に断熱材を貼れば成立するものではありません。構造・設備・空気の流れまで含めて設計し、それぞれが整合してはじめて効果が発揮されます。