今回のテーマは、地盤についてです。
以前の動画で地盤保険について解説をしましたが、こういう話はあんまりウケません。失敗しないポイントとか、◯◯10選という話の方がウケるんでしょうけど、私はウケない動画を一生懸命配信しているので、ご興味のある方はそちらの方も見ていただければと思います。それに関連して、地盤補強について知っておいていただきたいことがあるので、みなさんにお話ししていきます。
今年から群馬県の館林市というところで、お家づくりをお任せいただいています。ご存知の方は少ないかと思いますが、天皇陛下のお母さんのご本家は群馬県館林市にありました。そのため、美智子様がお嫁に来られた時には、館林は大盛り上がりだったらしいです。ただ、あくまでもご本家が館林というだけで、ご実家は東京にあるそうです。
館林地域は、群馬県の中でも特に海抜が低いです。赤城山よりもずっと下の方にあり、山からの水が流れてきて堆積する場所なので、今回の現場も地盤が比較的悪く、地盤補強工事が必要になりました。地層はそんなに深くはありませんが、3mの杭を39本打ち込むという工事をしました。金額は86万円と、高くも安くもない感じでした。
ちなみに、館林で過去に一番すごかった現場では、15mの杭を打ちました。家が2軒下に埋まっているくらいの長さの杭を打ったということです。本数は忘れましたが、たしかその当時で250万円ぐらいしたと思います。
地盤補強工事にもいろんな工法があるんですが、一般的には柱状改良工法といって、ドリルで穴を掘って、先端から特殊なセメントをピューッとやる工法を使います。ただ、この工法だと、杭の長さは8mぐらいが限度です。機械も小さいですし、スペースが狭いところでもできるので安価で済みますが、8mを超えてくると杭が作れないため、鋼管杭という鉄の長いつっかえ棒を作って、ジョイントしながら打つことになります。
15mになると、7.5mの杭を1本打って、ジョイントしてもう1本打つという感じになります。これをどんどん繋いでいければいいのですが、さすがに限界があります。住宅は大体、鋼管杭というもので対応できますし、群馬県だったら対応できないケースは今のところありません。ただ、東京ディズニーランドやお台場など、海岸の近くというのはすごく地盤が悪いので、そういうところだとこの方法は役に立ちません。摩擦杭工法という工法もありますが、サーフボードの上に家が載っかっているような感じになるし、どのくらいお金がかかるのかはわかりません。
怖いのは、さっきの柱状改良もそうだし、鋼管杭や摩擦杭もそうですが、建物が鎮火しないようにはしてくれるけど、耐震性を高めてくれるわけではないということです。あくまでも沈まないというだけの話で、地震の揺れに強いわけではありません。
昔、「杭を打つと地震に強くなると、営業マンさんに言われたからやった。」という話を聞いたことがあります。間違ってはいませんが、ちょっと違う気がします。たしかに地盤がいい方が、地震に対しても強いというのはわかるけど、上の建物がダメだったらそもそもダメですよね。冷静に考えれば当たり前の話ですが、消費者の方の都合のいいように解釈されていってしまうことはどうしてもあります。
以前、とある方が下田島モデルハウスに見学に来られたんですが、その方は鉄骨系の大手ハウスメーカーさんで家を建てられるとのことでした。地盤調査をしたら地盤自体は良かったんですが、営業マンさんから地盤補強はした方がいいと勧められたそうです。また、地盤がいいのに何で地盤補強をするのかを聞いてみたら、安全のためと言われたそうです。そして、「それってどういう意味があるんですか?」と質問をされました。私の中で考えられることとしては、大きく分けると2つありました。
1つ目は、本当にそう思ってくれたというケースです。その営業マンさんが見識ある方で、前の地層とかを見て、「この辺は地盤が悪い傾向があるところだから不安な感じもするし、補強しておいた方がいいんじゃないですか?」と言った可能性が考えられます。私にはそういう経験はありませんが、もしかしたらそういうこともあるかもしれません。
2つ目は、値引き費用を捻出したいというケースです。地盤補強工事の金額なんて検索しても出てこないし、わからないじゃないですか。もしかしたらその営業マンさんは、値引きという戦略で契約に持っていくルートで仕込んでおいたのかな?という感じがしました。案の定、質問された方も「そんな気がする。」と言っていました。
また、これをご存知の方は住宅関係者の方でも少ないような感じがしますが、保証の仕方というのもあるんじゃないかと思います。地盤調査をして、地盤が良ければいいじゃないですか。地盤が悪ければ、悪いなりに補強をしなくちゃいけないし、保険に加入する必要があります。ただ、保険によってはちょっと怪しいものもあるし、実際どういう内容なのかわからなかったりもするので、そこの部分はちゃんと気にしていただきたいです。
地盤が良いか悪いかを調べて、悪かった場合は補強をして保険に入るとして、良い場合は入らなくていいのかというと、実はそうではなかったりします。住宅会社さんにとっては、入ってもらわないと困るケースもあります。仮に地盤調査の結果が良かったとしても、あとで建物が傾いちゃったという場合、瑕疵担保法により住宅会社さんの責任になってしまうからです。なので今の法律からすると、地盤が良くても保険に入っておいた方が、お客さんのためにも住宅会社さんのためにもいいということです。
家を建て替える際に地盤調査をして、地盤が悪かった場合にも、当然補強をしなくちゃいけないし、保険にも入らなくちゃいけません。でもお客さんが「お金をかけて最新鋭の家にするのに、何で地盤補強なんかに余計なお金を使わなくちゃいけないんだ!」と言ってくることがあります。そして結局やらないことになっても、その後に家が傾いてしまったら、住宅会社の責任になってしまうみたいです。
そう考えるとやっぱり、地盤が悪かったら保険に入るのは当然ですが、地盤が良くても基本的には保険に入って、ちゃんと補強するということをしなければまずいと思います。あとは地盤というのは、調査した会社と保証会社の解析を突き合わせるため、我々住宅会社が中に入って「もうちょっと良くしてよ。」と言えるタイミングはありません。また、調査したデータは無線か何かで本部に飛んじゃうらしいので、改ざんはできません。
解析が緩い保険屋さんもあって、「当社だったら地盤補強なしで保険に入れます。」という風に言ってくるらしいんですが、実は裏事情があったりするみたいです。そうは言っても、ネットでは「ぼったくりだ!」と騒ぐ人もいるし、煽るような建築系YouTuberの方もいます。それは事実かもしれないけど、世の中には100%正しいことはありません。私の経験からすると、10%ぐらいぼったくりの人はいるかもしれませんが、過半数がぼったくりということはないと思います。
結局、重要なのは保険会社選びです。ちゃんとした保険会社さんに入れば、それなりの正しい解析はしてくれるので、それを信用するのが一番なんじゃないかと思います。ちなみに、当社の入っている保険会社の社長さんに話を聞いてみたら、言っていることもまともだし、やっていることもかなりしっかりしているなという風に感じました。
家づくりも全く同じで、パンフレットやホームページがいいところとか、いろんな宣伝をしているようなところもたしかにいいんだけど、しっかり話を聞いて、どのくらいの見識を持っているかとか、一貫性があるかどうかというところで見分けていくことが大事です。我々が保険会社や業者を選ぶ基準も同じだし、消費者の方が住宅会社さんを選ぶ基準も同じなんじゃないかなという感じがします。
地盤が悪い場所に建てた家を建て替えるという際、杭が残っていたら、全部引っこ抜いてもう1回綺麗にする必要があると思いますが、それにはとんでもない金額がかかってしまうので、そういう時はどうしたらいいのかという質問をされたことがあります。いろいろ調べたり聞いたりしましたが、はっきりとした答えはないみたいです。打ってある杭の位置を調べていって、可能かどうか検討するとか、地盤を調査したらこのくらいの強度があるから、それでOKと見なすとか、いろいろあるようですが、これはもうケースバイケースです。
私は今のところ、お家の建て替えの際に残った杭をどうにかしたという経験はありませんが、もし今後そういうことがあったとしたら、なかなか厄介かなという感じがします。ましてや4月以降に建築確認申請が変わりますから、市町村によっては、地盤の調査票を持っていかなければいけないところも出てきます。
いろいろ考えると、20〜30年で建て替えていくような家を作るのは、いいことじゃないなと思います。しっかりとした家を作って、最低でも50年は持つようにしたり、ちょっとしたメンテで持つような家を作っていくということが大事です。30年ごとにフルリフォームしていく家や、外壁を何度も塗り替えなくちゃいけないような家だと、どんどんお金がかかっていきます。
工場で作られたものを多用していくと、劣化がすごいです。コロニアル屋根とかを用いた家で、さらに地盤補強や建て替えなどという話になると、どんどん複雑になっていくのでやめた方がいいかなと思います。地盤補強の話からどんどんズレていってますが、そういうところからも考えることはありますよね。
今は建築コストが上がっているので、これから家を建てる方は大変だと思いますが、太陽光と蓄電池とヘムスとIoTを優先しちゃったり、屋根はコロニアル、外壁はサイディングという風にしちゃうと、メンテナンスコストは増大してしまいます。そうすると結局、トータルで高くなってしまうので、そこはくれぐれもお気をつけいただきたいと思います。