Facebook
X
YouTube
ホーム > ブログ > YouTube > ①意匠系設計士と構造系設計士②社員大工か請負大工か?③インスタ映えする家は怖くてお金がかかる④ローコストスキップフロアの注意点⑤許容応力度計算をやってもダメな家もある
YouTube
 | 2024.08.13

①意匠系設計士と構造系設計士②社員大工か請負大工か?③インスタ映えする家は怖くてお金がかかる④ローコストスキップフロアの注意点⑤許容応力度計算をやってもダメな家もある

今回は質問コーナーです。まずは最初のご質問です。

「建築士は意匠屋と構造屋に大別され、後者の実務者は少ないと新聞で読んだことがあります。私は気密と断熱の施工は申し分ない工務店を選びましたが、耐震性は自社基準でした。別途20数万を支払い許容応力度計算をしたところ、一部の基礎の厚さと2階梁の強度が不十分なことが判明しました。科学的な知見で設計をし、設計書どおりに確実に施工してもらうことが重要ですね。」

そもそも建築士で「構造屋さん」として働く人はあまり多くないと思います。その理由は、構造専門ではあまり稼げないからです。直接「構造だけをお願いします」というお客さんは少なく、多くの場合、意匠を担当する建築士がクライアントから依頼を受け、その意匠屋さんが構造屋さんに下請けで依頼する、という流れが一般的です。

当社のパソコンにはUA値計算や断熱計算、冷房シミュレーションができるソフトがあります。また、許容応力度計算ができるソフトも揃っていますが、これらの計算やシミュレーションは、あくまでも社内でのチェック用です。最終的には、当社が長年付き合っている構造設計士さんに仕事を依頼し、許容応力度計算を行ってもらっています。

地盤調査を行い、その結果が出たら構造設計士に依頼して基礎計算を行います。これは別途お金がかかるのですが、仕方のないことです。仮に自社でこれを行ったとしても、無料ではなく、どちらに支払うかの違いだけです。私も構造設計士に対してお金を支払っていますが、それは当然お客さんからいただいた費用を充てています。私が何かを上乗せしているわけではありません。

意匠系の設計士は多いと思いますが、意匠を手がけながら構造計算も行うことで、無理のない家を建てることができます。意匠にこだわりながらも、安全性を確保している点は評価すべきですが、こうした設計士は少ないのが現状です。意匠屋さんは意匠に力を入れがちで、構造の重要性が軽視されることが多いのです。

広い間取りや、2階が飛び出しているような家がある場合、1階よりも2階が突出している設計も可能ですが、当然限界があります。安定性を考えると、地盤がしっかりしているところに建てるのが基本です。当社の場合、まずは安定した基礎をしっかり確保した上で、ほぼ平屋に近い形状にし、その上に追加するという考え方を採用しています。安定した構造を両側に配置していくのが、構造設計の基本だと思います。

ただ、こうしたシンプルな設計は意匠屋さんにとってはつまらないもので、インパクトに欠けます。意匠屋さんに依頼する人は、変わったデザインや驚かせるような建物を求めることが多いでしょう。

例えば、下部が小さく、上部が大きく張り出したデザインの家は、見た目にはインパクトがありますが、実際には構造的に不安定です。このようなデザインを採用する場合、必要に応じて補強を行うことが重要です。しかし、見た目に面白みがないため、つまらないと感じる人もいるかもしれません。

このようなデザインでは、荷重がかかることで家全体が回転するような力が働きます。特に地震時には、非常に危険です。そのため、構造を安定させるために、太い梁を入れて引っ張り合いの力でバランスを取る必要があります。しかし、地震で家が揺れた場合、引っ張る力が弱いと、家が部分的に損壊する危険性があります。こうしたデザインは、建築雑誌やインスタグラム映えするかもしれませんが、見た目だけでなく、構造的な安全性をしっかりと考慮することが必要です。

メルマガでも何度も言ってますが、スキップフロアのある家も危険です。スキップフロアとは、1階と2階の間に階段がたくさんあり、途中に中間的な床がある設計のことです。スキップフロアを知っている方ならご理解いただけると思いますが、通常、家の耐震性は床が一体となり、壁と接続していることで保たれています。

地震の際、床に伝わった力が壁に伝わり、最終的には基礎に力が逃げていくことで家は安定します。しかし、スキップフロアの場合、床が分割されているため、外壁に対して床がしっかりと接続されていないことが多いです。このため、地震時に揺れたとき、力がうまく壁に伝わらず、不安定になる可能性があります。

スキップフロアを取り入れる場合、許容応力度計算が必須です。しかし、許容応力度計算を行った結果、エラーが出る可能性もあります。特に、ローコスト住宅でスキップフロアを採用するのは非常に危険です。

また、スキップフロアには構造上の問題があり、そのために費用がかかることを説明してくれる工務店や設計士でなければ、危険です。これは大きな声で伝えたいと思います。実際に、スキップフロアを売りにしているローコスト住宅会社もありますが、その多くは構造計算を行っていないように見えます。社名は言いませんが、そのような会社の家は本当に危ないと感じます。

では次です。

「ダクトレス換気良いですよね。正直フィルターの清掃を頻繁にするの自信ないです(笑)二酸化炭素濃度が1000ppmを超えると体調に影響するらしいのですがダクトレスはそのあたりどうなんでしょうか?」

高性能換気システムは優れた機能を持っていますが、簡単に掃除できるかどうかが重要です。掃除がしにくいと、換気システムが正常に機能しなくなる可能性があります。

ダクトレス一種換気の場合、家の大きさにもよりますが、3~4箇所の壁に取り付けられ、その部分で空気を換気します。これらの換気ユニットには多くのフィルターがあり、汚れ具合にもよりますが、基本的には月に一度フィルターを取り外して掃除する必要があります。フィルターが詰まると換気ができなくなり、特に冬場はカビが生えるリスクもあります。

一方、ダクトを使用する一種換気システムの場合、ダクトで配管され、大元の機械に大きなフィルターが設置されています。このフィルターを定期的に掃除することでシステムを維持できますが、機械自体が大きく、防音対策や点検のしやすさも考慮する必要があります。また、ダクトが長くなると、内部が汚れる可能性もあります。

二酸化炭素濃度が上がる原因としては、部屋の容積やその中にいる人の数が影響します。また、子どもと大人では二酸化炭素の排出量が異なるため、正確に一概には言えません。例えば、子どもが5人いて活発に動き回っていると、ppmはどんどん上がります。また、家におじいさん・おばあさん、お父さん・お母さん、若夫婦の6人がいると、それだけ二酸化炭素が排出されるので、ppmも上がります。

私自身もこのモデルハウスで測定したり、お客さんの家で測定することがありますが、30坪ほどの家で家族4人が普通に生活している場合、二酸化炭素濃度が1000ppmを超えることはなかなかありません。しかし、狭い部屋で家族が集まってご飯を食べたり、会話をしたり、テレビを見たりしていると、測定器がピーピーと鳴り、二酸化炭素濃度が1000ppmを超えて1200~1300ppmになることもあります。

このような場合でも、家族が他の部屋に移動したり、三種換気で少し換気を行えば、二酸化炭素濃度は下がります。ただし、これはあくまで気密性がしっかりと確保され、換気が上手く機能している家の場合です。

濃度が急激に上がり続ける、または高いままの状態が続くことは、私の経験ではあまりありません。結局、状況によって異なるということです。

では次です。

「私は下請けで戸建の構造や省エネの計算や申請代行やってる2級ですが、許容応力度計算は儲からないから積極的に請けてません。メインは省エネ計算や申請の仕事です。と言うのも許容応力度計算で成り立たない物件も少なくないです。床倍率を考慮せずに吹抜を多用してるケース、一階のLDKが大き過ぎてべた基礎が成立しないケース。また、省エネの計算の仕事と比べて聞き取らないとならない情報(樹種や金物、基礎の仕様)が多過ぎるのと、設計担当者に尋ねてもそもそも職人に丸投げ、プレカット屋に丸投げだからわからないと言うケースもあります。」

この方は本業の方でしょうね。

やはり順番が大事なのでしょうね。許容応力度計算をやる前に、それを実行しても大丈夫かどうかを先に確認するという話になるでしょう。お客さんと営業マンが打ち合わせをして、好きなように間取りを決め、自社で全く確認もせずに、お客さんの希望により計算を行った結果、そもそも無理だったということに後から気づくケースがあるようです。

樹種についても重要で、どんな柱を使っているのか(スギ・集成材・無垢材など)を把握する必要があります。また、もっと言えば地盤調査のデータも必要です。

このようなケースは中小工務店では多いですね。町場の工務店さんで設計担当者がいる場合、その方はCADや建築ソフトで間取りや立面を書いているだけで、構造については全くわからないことがあります。1級建築士の免許を持っていても、構造については理解していない人も多いです。

うちの進め方としては、メルマガでも書きましたが、お客さんの要望を聞いて間取りを作成し、要望を聞いて優先順位を決めてもらいます。私は現地に行って、太陽の方向や敷地の高さ、周りの状況を見ながら、その要望を具体化します。大体うちで家を建てる人は、「この理屈になるんですね」とか「プロの方がそう言うならベストなんだと思う」と納得してくれます。私も理屈を説明します。

逆に、納得がいかない方もいます。「どうしてもこれをやりたい」という場合、できなくはないけどマイナスが発生する可能性があります。高性能住宅を建てたいと言うお客さんがいても、本当の要望が違う場合、それを了承するのは私には無理なので、それができる会社に行った方がいいんじゃないかという話になります。

お客さんに考えてもらい、できればこういう部屋が欲しいとか、収納などの細かい要望を足してもらいます。そうすると最終的に図面ができ、一度軽く構造計算をしてみます。そこで壁が足りないなどの問題が出た場合は修正を行い、確定します。基本的にはそこから間取りを変えることは難しく、窓の位置を変えると許容応力度計算が成り立たなくなるので、棚の配置や収納の変更など、構造とは関係ない部分の調整を行います。

最終的にすべてが決まった後、地盤調査を行い、許容応力度計算に持っていくというのが正しい手順です。しかし、そういった手順を説明しない会社も多いと思いますし、お客さんによっては「やっぱりこうしたい」や「もっと大きな窓を使いたい」といった要望が出てくることがあります。そうすると許容応力度計算が成り立たなくなり、構造屋さんも嫌になるでしょう。料金は変わらないので、追加料金を払ってくれない会社もあります。

こういうケースは本当に多いです。この辺りも気をつけるべきであり、消費者の方もそういうルールや理屈を理解した上で家づくりをされた方が、より良い家ができると思います。