今回は珪藻土について解説します。
当社のホームページや完成事例を見ていただくとおわかりいただけると思いますが、当社は基本的に、室内の壁の仕上げについては珪藻土を使っています。ただ、お子さんの部屋・洗面脱衣・トイレ・水回り(キッチンは除く)などは、基本的には珪藻土ではなくクロスを使っています。なぜかというと、洗面脱衣などは湿気やすいからです。そういう所はクロスで防湿するような感じにして、換気扇で湿気を抜く方が早いと思います。
たまに、「そういう所には珪藻土を塗って湿気を調湿した方がいいんじゃないか」と言われる方もいます。しかし残念ながら珪藻土は、そんなにグングン吸ったり吐いたりするものではなく、ゆっくり吸ってゆっくり吐くようなものです。
例えば、洗面所の面積は2〜3畳ぐらいですけど、お風呂の湿気が来るなどしてすごく湿気ていることがありますよね。あの広さであれだけの湿気を、珪藻土だけで処分するのは不可能です。だったら換気で湿気を抜く方が早いです。
また、場合によっては換気でも足りない時もあります。あまりにも洗濯をバンバンやって、お風呂もやっているなどして、換気でも湿気が溜まってしまうような場合は、除湿機を置くのが一番早いと思います。最近は、脱衣室に簡易的な物干しバーなどをつけて予干しすることもあります。ああなると、なかなか換気だけでも湿気を減らすのは難しいです。そういう場合は、当社のお客さんにおすすめしているような除湿機を置いてもらい、強制的に強力に除湿するのがいいです。
ただ、冬であれば部屋の中が暖かいですから、ドアを開けて温度をリビングと同じにしていって、水分を拡散させるなどもできますが、夏に室内干しはさすがに厳しいです。そこで除湿機を使うと、除湿機は意外に熱を発生しますから、今度はムンムンしてきてしまいます。
かといって、エアコンでやるのも厳しいです。たまに、夏に2階のホールに思いっきり洗濯物を干して「湿気が湿気が」と言って、屋根裏エアコンで一生懸命除湿しようとしている方がいます。しかしそれはなかなか厳しいです。あくまで屋根裏エアコンというのは、家という大きい容積で、自然に滞留してしまっている蒸気をエアコンが調整するものです。そこに「干した洗濯物までやってください!」と言ったって、なかなかうまくはいきません。確かにエアコンは除湿能力が高いけど、屋根裏エアコンは家の全体の空間に対してやるものです。
もしやるのなら、6畳みたいな小さな部屋に洗濯物を干して、そこのエアコンで処理した方がいいと思います。引き渡しの時にもそういう説明の紙は渡していますが、残念ながらよく読まないで、自分のイメージだけでやられる方もいます。結果、なかなかうまくいかないことになります。
話がずれていますが、いずれにしても珪藻土は、ある程度広い面積を塗って水分の吸収・放出を行うものです。グングン吸ってグングン出すような、魔法のようなものではないので、そんなにすごい期待をしてはおかしな話になります。まずはある程度の面積を塗ることが重要です。
珪藻土の材料は北海道で取れます。当社の使っている珪藻土は、北海道の工場で作ってもらっています。珪藻土を入れる量と吸放出能力の関係を実験してもらっており、当社の指定の量でブレンドしてもらっています。というのも、当然珪藻土の粉は入れれば入れるほど吸放出能力が高まるのですが、その一方でどんどん色が濃くなるんです。濃くなって、表面が荒れてきて、だんだん泥というか岩石のようになってくる感じです。そうすると、家の中に塗ったときには暗くなる感じがあり、やりすぎるとインテリア的におかしくなってしまいます。
5種類くらいのサンプルを作ってもらって、当社の建具・床などと合わせながら量を決めています。調湿材には、JISで規定する「70g/㎡/24h」(1平米あたりで、24時間で70gの水を吸放出する)という基準があり、これ以上でないとJIS規格では「調湿材」と認められません。当社の珪藻土はこれをクリアするように作っています。
ちなみに、当社の珪藻土は薄いベージュですが、たまに「もうちょっと白くしたい」「もっと白いものはないですか?」と言われることがあります。珪藻土の量を減らすせば、白くすることはできます。しかしそうすると、さっき言った70g/㎡/24hの基準から減っていくので、吸放出をほとんどしなくなってしまいます。
白い建材では、例えば漆喰があります。たまに勘違いされて「漆喰は調湿材」と思われていますが、あれの調湿機能は大体最大でも40g/㎡/24hぐらいなので、JISで規定する調湿材ではありません。漆喰は基本的には調湿材ではなく、アルカリ度が強いからカビが生えにくい効果があり、その機能を求めて使うものです。でもそれも永遠に続くわけではありません。どちらかというと、白い壁を仕上げる、インテリアという側面が強いと思います。珪藻土は比較的調湿目的で選択するものだけど、漆喰のように白い壁を作りたいがために使うものでないのかなと思います。
そうはいっても、当社でも少数ですが、過去にお客さんの要望で漆喰を塗ったことはあります。ただ、本当の漆喰を塗るのはなかなかコストがかかります。また、本物の漆喰は強アルカリなので、壁の下地のボードに直接塗ると下の紙がベラベラになってしまいます。だから下処理をして、吸い込みをしないようにしてから漆喰を塗るなどするので、実際は珪藻土よりも手間がかかります。
漆喰でも珪藻土と同じように、下処理しなくても塗れるものもあります。素人の方がDIYでも扱えるものでいい製品なんだけど、本来の漆喰のようにアルカリが高いかどうかはわかりません。いろんな実験データが出ているので、それも参考にしながら選ぶ方がいいと思います。
ただ残念ながら、実験データはメーカーさんに都合のいいように作っている場合もあります。この辺りは、漆喰をずっと使い続けている工務店さんに詳しい話を聞いてみるのがいいと思います。その工務店さんの方が「実は漆喰とはこういうものだ」「こういう風にしなくちゃいけない」など、いろんなことを理論的・客観的に話してくれる方だったら、信用してもいいと思います。今はそういうことも必要な時代になってしまったと感じます。
珪藻土を入れる量によって色が変わるというのは、モデルハウスでも見れるし、動画では写真も載せています。これを見てもらうとなかなか面白いと思います。
また、何度か話していますけど、今住宅業界で使われている珪藻土は、ほとんどが偽物で、混ぜ物をしています。本来珪藻土というのは、珪藻土の粉に”すさ”という珪藻土の粉を繋ぎ止めるための結着剤と、でんぷんのりみたいなものを混ぜて、それを水に溶いて塗るものです。天然の接着になるので、そんな簡単に剥がれることはないです。
当社のこのモデルハウスも、もう建って8年になります。吸放出したり、多少家も揺れたりしますし小ヒビは入るけど、どこか浮いているというのは今のところ全然ないです。お客さんの家でも、そんなことはありません。ただ、これが混ぜ物がある珪藻土では、ヒビは割れにくいんだけど、何かの拍子で下地から浮いてしまうことがあります。
その一番の原因は、さっき言った結着剤です。珪藻土の粉を固めるために使う結着剤が、劣化しやすいものなことです。例えばプラスチック系みたいなものを混ぜているケースなどです。確かに伸びるようになるから、塗りやすいなどの効果はあります。しかし、なんとなくイメージがあると思うけど、接着剤はずっと光に当たっていると弱い面があります。例えばそれが南面ですごく暑かったりすると、その接着剤が熱でやられたり、そもそも家の性能が悪いなどであれば、何かの拍子でバラッと剥がれることもありえます。
実際、モデルハウスに来たお客さんで「全面珪藻土を塗っているんだけど、珪藻土ってボロッと剥がれますよね」と言われた方もいます。「当社でももう10年ぐらい使っているけど、当然小ヒビはこんな感じで入りますけど、浮いているとかバラッと剥がれることはないです」と答えると、「うちの実家で塗ったんだけど、10年以上経ってだんだん浮いてきた。ヒビ割れたところから浮いてきて、バラッと剥がれてきたんです」と言っていました。それは施工の問題もあるかもしれないし、使っているものは何かという側面もある。一概に珪藻土だから浮いて剥がれるのか、というのはなかなかわかりづらいです。
もっと言えば、耐震性の低い建物で揺れやすいとか、壁がうまく配置されていないのに窓ばかり大きい家で塗ると、余計に揺れたりします。地震が来なくても、国道の脇に建っていればミシミシ揺れてしまい、よりヒビが入りやすかったりもします。一概に珪藻土がどうとは言えないですが、いろんなものが重なって劣化が始まることはあります。
ちゃんとした材料を使うのはまず絶対です。ちゃんとした施工をするのも絶対です。プラス、劣化しないような家の作り方などということをやると、なるべく完璧に近づくようになります。逆に言うと、耐震性もなく、窓も適当につけている、家の中は暑い、使っているものもダメとなると、劣化しやすくなるし耐久性も短くなります。世の中は物質の道理なので、こういうことも考えながら家づくりをしていった方が、後からお金が掛かりにくくなります。
最後に、モデルハウスに来てる人にはお見せしていますが、ここに一般的に使われているメーカーさんの珪藻土のサンプルがあります。これに水をかけるとどんなことが起こるか。対して、当社の珪藻土にかけるとどんなことが起こるか。一発見ただけで、なんとなくわかると思います。モデルハウスに来た方はぜひ見てください。グダグダ私が言っているより、見た方が早いと思います。