今回は質問コーナーです。
まずは1つ目です。
「窓についての質問です。1階西側に1.5畳ほどの納戸を設ける予定なのですが、換気のための小さな窓は必要ありますでしょうか?」
結論としては、つけてしまうと逆に熱くなってしまいます。空気は入口と出口がないと換気できませんから、窓を1個つけたところで換気はできません。窓1個と吸気口をつけるなど、何かしら空気の道を作らないと、なかなか換気しません。質問者さんの場合は西側ですから、夏はすごく暑いし、ましてやそこは納戸です。そういうところに窓をつけるのは、逆に暑くなる原因になります。
西面は、トリプルガラスの遮熱窓を使っても暑くなります。以前メルマガ動画でも上げましたが、真夏の西面で、07405のトリプル遮熱窓の表面温度を、ハニカムブラインドを開けた場合・閉めた場合で温度比較したことがあります。結果は、ハニカムを開けた瞬間にすごく高い温度になっていました。窓ガラスは、遮熱窓とはいえなかなか効きません。換気したいのであれば、換気扇をつけた方がいいと思います。
今回は西面の納戸の前提で話をしましたが、なんと言っても夏は“頭”が重要です。人間が夏の暑い時に帽子をかぶるのと全く同じで、天井断熱よりも屋根断熱の方が、夏は効くんです。屋根断熱をしっかりやって、棟換気をつけて屋根の通気をしてあげると、家は涼しくなります。
先日オープンハウスをやったのですが、その日は夏日ですごく暑かったんです。その中で、お客さんがオープンハウスに入った瞬間に「涼しいですね、エアコンつけているんですか?」と言われました。「エアコンはつけていませんよ」と答えると「こんなに涼しくなるんだ」と驚いていました。これが、日射遮蔽・屋根断熱や、ちゃんと通気をするということで得られる1つの効果です。
これは工事中のお客さんも体感されて、みなさんびっくりしています。夏の工事中に、屋根断熱・壁断熱が終わって、壁のボードなどは入っていない状態の時に、お客さんが現場に来て家に入った瞬間に「涼しい」と言われます。もし工事中の方がいましたら、それを体感しに行くのもいいと思います。
次のコメントです。透湿防水シートの話です。
「ドイツは山地が多く、雨も湿気も多いです。季節の寒暖差が激しく、大きな地震が当たり前のように起こる日本とは、環境が違います。ドイツは1977年に非透湿性気密部材の使用を禁止され、熱貫流率の上限規制で分厚い断熱材の使用が必須になりました。気候変動で気温が上昇した現在は、カビ発生に悩まされている家屋が増えてきているそうです。」
これが本当に正しいかはわからないけど、何となくそういう話は私も聞いたことがあります。ドイツは、最近は本当に暑くなったけど、エアコンがついていない家が多くて、夏に困っているそうです。気候変動によって家づくりも変わってくるということが想像できますよね。
家づくりは、その地域に合わせた作り方をするのがいいのであって、一方的な「どこの国の◯◯がいい」という情報には、いい点・悪い点があることを理解しておく必要があります。「それがいい」という情報だけで取り入れてしまうと、場合によっては危険性が高まることもあります。ここは日本だし、群馬県では場所によっては湿気も多いです。そういうことも加味しないといけません。
次のコメントはマキシオンについてです。今回は読み上げるのはやめておきます。マキシオンは「40年間劣化しない」という謳い文句でやっています。たしかにそれは1つのメリットではあるけど、それ以外のシステム保証の問題や、価格の関係もあります。
ちなみに当社が今年から採用している太陽光メーカーさんは、パネル1枚あたりのワット数も大きいし、変換率も高いです。金額は、去年のLooopでんきさんより2万円ほど上がりましたが、7kWで14万円なら我慢どころだと思います。ただこれは現金購入の場合の話で、分割払いの場合はもっと金額が上がります。でもパネルの性能もいいし、使っているパワコンもPanasonic製で、設置方法もキャッチクランプ工法です。屋根メーカーさんだから部材も全部自分で作っているので、安心です。
一方、東京電力さんがやっているものだと、穴あけ工法しかやらないそうです。なぜキャッチクランプ工法をやらないのかがわかりません。あくまでも私の意見ですが、コーキングは一生持つものではないです。軒が出ている前提で垂直面であれば、劣化はある程度防げるけど、屋根面のような暑くなりやすいところで、なおかつ屋根がフラットで、水がなかなか流れにくい状態のところに穴をあけるのは、私はちょっと怖いと思います。
次のコメントです。以下の動画に対していただきました。
▼正しい床断熱の施工方法
https://www.kosodate-sekkei.co.jp/blog/tadashii_yukadannetsu/
「6地域で、床断熱のオススメの素材と厚さはありますでしょうか?」
「オススメの素材」ってなかなかないんです。グラスウールでもいいし、発泡ウレタンやスタイロフォーム系のものでも、セルロースファイバーでも、何を使っても大丈夫ですが、使う断熱材によって厚みが変わります。
例えば、6地域でHEAT20のG2を目指すのであれば、高性能系の密度の高いグラスウールを15cmぐらいは使うと思います。これがセルロースファイバーになると性能が落ちるので、20cmぐらい吹かないと同じ性能になりません。キューワンボードみたいな高性能系のプラスチックボードであれば、セルロースファイバーに比べたら性能は倍になりますから、厚さはセルロースファイバーの半分になります。この辺りはどういう性能にしたいのかによって変わってきます。
次のコメントです。以下の動画に対してです。
▼①軒ゼロは甘い!軒マイナスの家もあった②外壁がグリーンになりやすい家の条件③蓄電池を搭載する前に行うべきこと④大手ハウスメーカーの受注が激減している⑤高性能規格住宅は安いのか⑥発注ミスが起こりやすい家づくり
https://www.kosodate-sekkei.co.jp/blog/noki_zero_amai/
「板金屋です。軒ゼロの場合、工務店から要望もあるのですが、軒は60〜90cmは欲しいです。」
消費者の方には、軒ゼロ住宅はコスト削減のためにやってるようなイメージがあるようです。しかし本来、軒ゼロ住宅をやるのはお金がかかるんです。通気や防水の問題を考えたら、軒を出すよりもお金がかかると思います。
例えば車をリムジンにしたい場合、車を真ん中で切って伸ばすとしたら、全部に補強を入れて、フロアから屋根まで溶接をして、サスペンションも強化しなくちゃいけないですからお金がかかります。しかしただ切って伸ばすだけなら、東南アジアの田舎の車屋で作っているカスタムカーみたいな感じで安いと思います。あれは田舎道で乗る分には楽しいけど、高速に乗ったら捻れると思います。軒ゼロの家もそんな感じに見えます。何か余計なことをするのはお金がかかります。シンプルにやった方が意外に確実です。
次のコメントです。
「小暮さんにお勧めしないと直接言っていただけると安心します。去年、〇〇という企画住宅が建ち、設計者である松尾先生が直接見学会で説明してくださる企画がありました。その説明会で先生が話していたことで「Youtubeの中には間違った情報が多い」との話がありました。●●の名前も上がっていて、「耐震等級2で良いなんて間違った情報は発してほしくない」などと言われていました。それを聞いて、情報の見極めは難しいことを知りました。今日のメルマガに書いてくださっていた内容ですね!改めて日々の勉強を欠かさず、それを発信してくれている方々には感謝します。ありがとうございます。」
一時期は「あまり言うとまずいですよ」などと心配されていたのですが、こういうことを言っていただけるとありがたいです。反応を期待しているとか、アクセス数・登録者数を稼ぐという考えは私にはないです。しかし人によっては、他者批判・悪口と捉える方もいるから難しいです。何度も言っていますが、捉え方は自由です。他者批判・悪口と捉えるのは自由だけど、それで気分が悪くなるのなら見ないこと、そして余計なことは書かないことです。
また、私の中で悪口というのは、その人を意味もなく感情で批判することだと思います。私の話はどちらかというと「これはおかしくないですか?」「これは本当にこうなるのかな?」「客観的に見るとこうなっちゃうよ」という感じです。最終的には人それぞれの感じ方なので、それがいいと思う人は買えばいいし、おかしいと思う人は買わなきゃいいというだけの話です。
私が、モデルハウスやオープンハウスに来たお客さんと話す時に言うことが、勘は案外大事だ、ということです。いろんなYouTubeやメルマガを見て知識を得るのはいいことだと思うけど、どんなに勉強しても素人の方がプロに敵うことはないと思うし、中にはプロといえども間違ったことを言う人や、それを正当化しようとする人もいます。言っていることは事実だけど、それが当てはまるかはわからないということをずっと言う人もいます。勘所、客観的なものの見方、情報の取捨選択を磨くことも大事だと思います。
勘をわかりやすく言うと、そんないい話はないだろうと思うことです。例えば投資でも「今これを買えば儲かります」と言われた時に「本当ですか?」と言う人間と「そんないい話はない」と言う人間がいます。これも客観的なものの見方だし、情報の取捨選択だし、「そんないい話があったら自分でやってるよ」と思うのもその人の感覚です。この感覚というのは人間が持って生まれるものであって、頭がいい・悪い、出身大学などは全く関係ないらしいです。こういうところを磨くのはいいと思います。
あと、以前の動画で「オススメの本を教えてください」という質問をいただいた時に、松尾先生の本や前先生の本、日経ホームビルダーなどを答えました。それは、建築の本としてのおすすめで、私が本当におすすめする本は、建築の本ではありません。ものの見方・考え方、情報の取捨選択についての本です。
建築の知識を高めたり、UA値・断熱がどうということも大事だけど、それと同時にものの見方や頭の使い方についての本を読んだ方が、より簡単に情報が取捨選択できるし、騙されないし失敗もしにくいし、諦めがつくと思います。ここで言う「諦め」とは、「諦める」という意味ではないです。
100%を目指す方がいるんです。総量としてはOKだけど、そっちには目を向けず、ある一部分についてずっと言っているような方です。その気持ちはわかるけど、それが住み心地や生活について、何か大きな影響を及ぼすんですか?と思ってしまいます。
家づくりも同じで、100%を目指すのはいいんだけど、そういうことじゃない部分もあります。それがわかってくると、工務店選びもスムーズにできると思うし、家づくりも楽しくなるかなと思います。私もお客さんと話す中で「この人はよく考えてるな」「この人だったら失敗しないだろうな」「この人は当社で建てなくても大丈夫だな」などと思うことがあります。そういうものの考え方は大事だと思うし、そういうところを高めるための本を読んだ方が、家づくりだけじゃなく人生規模で大きく見た時に、楽しくストレスを溜めずに済むと思います。