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 | 2024.05.10

①湿気は通さなくても通気はするのか②防湿気密シートを貼ると幾ら?③集成材を使う場合の注意点④スプルースを使う場合の注意点⑤現場も設計も知らない営業マンが間取りを書くのはどうか?

今回は質問コーナーです。まずはSW工法についてコメントをいただきました。

SW工法では、防湿気密シートを貼る必要はないという話。そもそもSW工法は、断熱材をスポンスポンと入れるものだから、あれ自体が湿気をほぼ通さない理屈になってるので、気密シートを貼らなくても別にいい。あとはそもそも湿気が出ないわけだから、そんなことはやらなくてもいいという話だったんじゃないかと思います。

SW工法のプラスチック系の断熱材というのは、湿気を通しにくいから、別に防湿気密シートなんて貼らなくたって同じじゃないかという話だった。ただ、そうは言っても、壁の中に湿気が入っちゃって、仮にそれが悪さをしちゃったら嫌だから防湿気密シートを貼りたいと言ったら、あまりいい顔をされなかったそうです。

じゃあ仮に湿気が入っちゃったらどうするの?と聞いたら、そのために通気層を取ってるとのことだった。さっき(湿気が)通らないと言ってたし、何で通気層の話になっちゃうんだよ、という感じで、話がおかしくなった。

その動画でも言ってますけど、こういう工法をやったとしても絶対に湿気が通らないわけではないんです。ただ、湿気が通りやすくするために、内側に気密シートを貼って圧力差をつけて、タイベックドレインラップというやつを貼ると染み出すみたいなことは付加断熱の時にやります。そういうのもあったりするので、この辺りは難しいです。

一般的には、こういう発泡スチロール系の断熱材を使う時には内側に気密シートを貼らなくても、これがバリアになるからいいという見解もあるんだけど、この時は、ここの厚さが80〜100mmぐらいと言った気がするんです。この場合、注意点があって、仮に使ってる断熱材が薄かったり性能が悪かったりすると、外から日射を受けた場合、通気層を取っていれば湿気が上に行くからいいんだけど、あまり機能してないことがあるんです。

通気層はあるんだけど、湿気が逃げないこともあるし、実際には湿気が流れていない通気層も世の中にはある。ましてやこっち側に黒のガルバを張ったら、すごく暖まるじゃないですか。その上、断熱材が薄かったりすると、内側が暑いから、エアコンでどんどん冷やしちゃって、中で冷やされた空気が入っちゃったりすると、結露が起こります。

結露計算というのはあくまでも、ちゃんとした状態のもとで、ちゃんとした施工をしていれば結露しないというものなんだけど、そもそもちゃんとしていないと、計算の条件が変わってきたりするので、こういうところは難しいですよね。

では次です。

“『防湿フィルム施工は「湿気が入ってくる量・スピードを小さくする」効果はあるが、既に同種の効果を得られるウレタン断熱材と重複することで過剰設計となっている恐れがある。部材の納まりを考慮した丁寧な防湿フィルムの施工を行うことは、お施主様の想定以上に工期・施工費用・施工手間等に大きく影響がある可能性がある。』とのことでした。小暮様は(工務店によるが)10万円程度と仰ってましたが、当方の場合の相場感をご意見頂戴できないでしょうか?

この家は、延べ床面積が35〜36坪なので、一般的な大きさの家です。35〜36坪の家で、壁の内側に防湿フィルムを施工したとすると、使う防湿フィルムの本数は大体3本ぐらいです。使っても4本ぐらい。1本あたり100mぐらいあるんですが、100mのシートだと1本あたり1万円ぐらいするんです。普通の防湿気密シートでです。可変気密シートになるとさらに高くて、多分これの5倍ぐらいするんじゃないかな。100mの可変気密シートだと1本あたり4万〜5万円ぐらいするので、可変気密シートはすごく高いんです。なので、可変気密シートというのはいいものなんだけどやっぱり高い。それだけのものを全面貼ってもなと思うところもある。うちなんかだと可変気密シートは屋根面のすごく熱くなりやすいところに使います。

あとは大工さんが貼る手間だけど、35坪ぐらいの家であれば、慣れた大工さんだったら4日もかからないと思う。うちの大工さんも3日ぐらいでやってます。かかっても4日ぐらいかな。単価で言えば1日2万円ぐらいでしょう。地域にもよりますけど、仮に単価2万円の大工さんであれば8万円じゃないですか。4万円足せば12万円ですよね。そのくらいが原価です。あとは住宅会社さんによって管理費か何かで経費を乗せるのかもしれないけど、それにしても何十万円にはならないですよね。何となくですが、14万円ぐらいでできるんじゃないかな、という感じはします。

その工務店さんが言っていたように過剰設計になるといえば、そうかもしれないよね。そもそもウレタンで取るわけだから、二重にするのは過剰かもしれないけど、部材の納まりを考慮した丁寧な防湿フィルムの施工を行うことは、お施主様の想定以上に工期・施工費用・施工手間等に大きく影響がある可能性があるというのは、はてなマークがつきますよね。「お施主様の想定」というのがどれぐらいなのかにもよるけど、工期も施工費用もそんなにかからないはず、あくまでも私の考えですよ。この辺りは喧嘩をせずにうまく話し合っていただいた方がいいかな、という風に感じます。

次は建築系YouTuberさんの話題についての感想です。


例のYouTuberさん、あらゆるところで袋叩きです。自分も前々からこのおっさんはヤバいと思いつつも、価値観、考え方の違いと見ていたのですが、だいたい見聞きしたことを鵜呑みにしてるんだなというのが丸わかりで、コメントも書かないでおいたのでした。が、やはりカビ、気密、換気、集成材の話については本質理解が足りてなく、誤認からくる誤情報発信が結構まずいレベルにあるように思えて、ギリギリラインの苦言を書き込んでしまいました。

もう一人、激しい苦言をしていた人はブロック。自分はギリギリブロックは避けられたようですが、多分ブロックしたくて仕方ない側の存在になっていると思います。

集成材については、スプルス以外がよいと思われ、仮に使うなら防湿がしっかりしていることに加えて、付加断熱にしとけば無難という考えですが、一律正解ない領域にも思えたりします。個人的には集成か否かよりも樹種が気になります。

集成材が悪くて無垢がいいというのもケースバイケースで、使い方や使う場所によってここは無垢じゃないとな、と思うこともあります。絶対に集成が悪くて無垢がいいんですとか、昔からの伝統建築材は無垢なんですと言われても、「ん?」と思うところがあります。ここにも書いてあるけど、今の家は防湿するということが前提なので、防湿しないといけない柱が無垢か集成かということじゃなくて、無垢の柱を使ったって防湿しなければ腐るということが問題です。

あとは、スプルスというものは私もよくないと思います。スプルスは外材です。たしかに強度はあるんだけど、ヨーロッパの寒くて乾燥したところでできたものなので、防湿がしっかりしてればいいんだけど、しっかりしてない家に限ってスプルスを使ってることが多いんです。気密・防湿のことをあまり気にしない方とスプルスを使ってる方というのは大体イコールになってるんです。

ハウスメーカーさんなんかもそうですよね。そうなるとスプルスはまずいんじゃないの?という感じがします。スプルスが絶対悪いというわけじゃなくて、使うんだったらよりしっかりと防湿しなくちゃいけないし、乾燥しやすいように通気を取らなくちゃいけないという風になってくると思うんです。そもそも弱いものなんだから。でも不思議なことに、スプルスを使う方に限ってそこは全部甘いというパターンが多い。大手ハウスメーカーさんではみんなスプルスを使っていたりする。ああいうのを見ると、ハウスメーカーさんは大きな会社ですごそうな感じがしますけど、全くすごくないなと思っちゃいます。よくわかってるようでわかってないんです。

ちなみにうちはちゃんと杉の国産の集成を使ってます。その辺も檜の方がいいのかどうかというと、難しい部分もある。別に杉でもちゃんと強度は出るし、ただ、外部に使う時は杉だと弱くなる雨がかからない場所がいいので、雨がかりのところは檜の方がいいのかな、という感じがする。

なかなかこれは難しいですね。人によって無垢派・集成派があるから私は別にどちらでもなくて、いいものはいいとか客観的に認められてるものは認めるという事実があるからそうする方が大きな間違いはしないんじゃないかな、最高かどうかはわからないけど間違いは起こりにくいんじゃないかなという感覚です。

では次です。文系と理系の家づくりみたいなことをメルマガで書きましたが、その感想です。


男性、理系→理論武装、好奇心、新規性への興味、主張、過信により墓穴を掘る。
女性、文系→直感、感性、衝動性、安心を求める、騙されやすい。

こんな感じでしょうか。結局、建築系のみならず、あらゆる製造業についていえますが、

アウトソーシングも、
分かっててアウトソーシングと、
分からずにアウトソーシングがあり、
後者はトラブルを起こしがちだなと。

また構造計算においても、

1.構造区画の設定から構造計画をしっかり立て。ルール準拠で設計し、構造計算も自力でやる人
2.1で第三者の目を入れるために構造計算をアウトソーシングする人
3.簡易計算だけし、ルールも分かったつもり。雰囲気設計であとはアウトソーシング。力技で修正。

こういうのも分かっててやるのと分からずにやるのでは大違いですね。

うちも大工さんに外部委託してます。うちは設計と管理はするけど、実際の施工は大工さんに委託するアウトソーシングですね。

家づくりでいえば、大工さんが自分で打ち合わせをして、自分で図面を書いて、さらに自分で叩くという感じ。全て自分でやるというのは最高といえば最高かもしれない。実際にこういう大工さんもいるんです。

うちの会社の場合は、私が打ち合わせをして間取りを書いて、社内でも一応ソフトで軽く構造計算をして、問題ないかは確認するけど、最終的には外注の設計士さんに依頼をして、構造計算をしてもらって、問題ないかを確認してもらった上で、プレカット屋さんに投げて、プレカットしたやつを持ってきて、チェックを現場監督の平石がして、現場で大工さんに指示をする。という感じなので、アウトソーシングは一部します。自分で構造計算をするのはできなくはないんだけど、さすがにうちぐらいの規模でそこまでやったら工事にならないです。

こういう住宅会社さんも案外います。

営業マンさんは現場の方じゃないんです。構造ソフトも触ったことがないし、建築の資格もないんだけど、その道が長いから間取りは書けるんです。こういうのも意外に多いと思います。100%とは言えないけど、営業マンさんが手書きで図面を書いて女の子に振って、トレーシングして、それを清書したものが出てくる。あまり構造や構造計算の話をしない会社は、本当に力技で何とかやってるというケースがほとんどでしょうね。

中小工務店さんでもあるし、フランチャイズ系のローコストの会社でもあるんじゃないかな。大手ハウスメーカーはさすがに設計ルールがちゃんとしてるので、こういうのはないですけど、その分自由度は全くない。どれがいいかは、そのお客さんの好みですね。最後にどれを選ぶかはお客さんの自由です。